日本生命代理店検定の受験終了。100点を狙ったがいくつか落としてるだろうな。資格試験には大きく2種類あってひとつは「受験生のみなさん、どうか受かってください」という慈愛に満ちた菩薩観音タイプと、もうひとつの「勉強も満足にしてないのによく受験しにきたな、覚悟してこの問題に挑戦してみろ」のレベルの高い無理難題、ひっかけ、わな満載の出題も随所にちりばめた閻魔大王金剛力士像タイプがある。今回の検定は前者のやさしさに包まれたタイプで、後者の典型は昨年受験して玉砕した「社会保険労務士」や「税理士試験」がそれにあたる。「税理士試験」は科目合格を重ね合格するまでに10年を要するという。
生保レディーをめざす受験生は若いお嬢さんたちが大半で、まれに場末のスナックのママのようなかたもいらっしゃる。ちらほら白髪交じりのご同輩たちもいるが、場違いな感じを覚える。生命保険の勧誘はやはり美しい彼女たちの力が必要なんだ。受験会場の日比谷の日本生命の本社の隣にまた新たに商業施設がオープンしていた。「失われた5年」また、お前もか、だ。
「東京ミッドタウン日比谷」オープンは2018年3月。
有楽町と新橋のあいだ。おやおや旭化成ヘーベルハウスの社員証ストラップを首にかけた社員たちがお昼時に風を切って歩いている。今年の8月から三井タワーに旭化成グループ会社の移転がはじまっているという。ヘーベルハウスに注文するとこの人たちのボーナスになるのかなぁと腕組み。
おしゃれすぎてこんなとこで食事できるか!とカンニングの竹山みたいにキレる。ミッドタウンさん、おやじたちの居場所もつくってくれ!やさぐれたおやじたちほどうでもいいってか。
次の虎ノ門での代理店研修までに時間があるので日比谷公園を散策する。「日本全国市場祭り」というのをやっていた。各地のご自慢の海鮮食材で腕を競う。東京人はみな田舎者だからそれぞれがふるさとの店の前に吸い寄せられていることだろう。
少数民族チベット島根からはひとり浜田漁港が出店し、甘鯛とのどぐろで勝負にでている。のどぐろなら知名度もありいけると思ったのであろう。しかし平日の昼休みということもあり、この屋台は苦戦していた。旧県民ならひと肌脱いで干物を買い占めるくらいの気概が欲しいが、わたし浜田漁港ってどこにあるかも知りませんことよ、とそそくさと冷たくスルーする。少数民族の屈折した心が悲しい。
となりがパエリャの店。立地も悪い。その隣がアワビやウニの浜焼きの店で長蛇の列ができている。「こんなに炊いてしまっておとうさん、どうすんの!」と奥さんに叱られはしないか心配になる。おじさんの顔にも売れ残ることへの一抹の不安がみてとれる。たしか北海道の店だったような。スペイン人かポルトガル人だか、お疲れさまです、きっと明日からの週末は連日売り切れですよ。
広島カープのような真っ赤に燃える店もある。今年は日本海側のずわいがにが豊漁であるという。一方で毛ガニが不漁。「ズワイガニ汁」とあるが、明らカニ「紅ズワイガニ汁」だね。かに命のおやじもカニの水揚げ、市況に一喜一憂している。
近所のスーパーバリュー「練馬インター」店ではたまに生筋子のいいのが入荷する。そんな時はめざとく見つけて鮮度をみきわめたうえで「家族の狂喜する」おやじ特製のいくら丼を提供する。おやじも自宅で屋台を出すこともある。
これを素手でほぐす。手のぬくもりだけで熟して鮮度がいいのだとぽろぽろ粒がほぐれてこぼれていく。小樽広島カープの屋台のように「こぼさなくても」こぼれていく。一般的にはぬるま湯でほぐす、というがおやじは一般的ではなく「ほぐし師」で非凡で特異な才能をもっている。たちまちこんなふうになる。
今晩、甥っ子がくる日。ふだん一人暮らしでコンビニ弁当が彼の命をつないでいる。おやじのハンドパワーによるこの宝石のようないくらでおもてなし。
豊洲にもそろそろあいさつにいくか。
「豊洲市場」は「とよすしじょう」という。大きい市場を「しじょう」というらしい。
なんか、いきたいところだらけ。横綱の東京ははてしなく広く刺激的で、まわりには大関横浜や関脇埼玉、小結千葉がこれまた太刀持ちとして際限なく控えている。
2018.11.23