家の建て替え~桧家住宅~

後発の中堅のメーカーはどんなもんだろう。桧家(ひのきや)住宅の場合

知り合いの税理士から勧められたのは埼玉の住宅メーカー「桧家住宅」。名前も聞いたことがなかったメーカーだが、大手が実際の工事を孫請けにだしマージンをとることから高コスト体質であることに反発して現会長が旗揚げしたという。急成長している一部上場企業。


いままでの大手とのやりとりをおおまかに伝え、コスト面でなんとかならんだろうかと担当者に相談すると、「60坪ですと、だいたい建築費だけで坪あたり80万円くらいで提示されたはずです。うちですと●●●●万円くらいで建てられます。」とおおかた他社の建築費用のことはわかっている様子。●●●●万円くらい安くあがる、のもわしらの想定とぴったし。解体費用が大手の7掛けですむ。やはりね。


家族構成図を用意していたので土地の権利関係や家族状況を説明しながら希望する住宅のイメージを伝える。

すると、こちらで想定していた間取りと全く異なる建て方を提案された。すなわち、敷地に2棟建てる、というもので、1棟は住居用に、もう1棟は「戸建賃貸住宅」の一棟まるごと貸す、というプラン。



寝耳に水。

土地は妻と亡き義姉の子の½共有で妻の相続のさい、子どもたちも参入してややこしくなると思っていた。いっそのこと持ち分を買い取るとか、まとめる必要があるとはしながらも、現金を用意して「売ってよ、はい、買うね」と簡単にはいかないのが東京の土地の高さ。

東京の狭小の土地でも地方の人は値段を聞いて目がくらむ、という。強欲の嫁が家族にはいるとこれに目をつけ、あらぬたくらみをするという。「土地」に目がくらむのだ。


土地を半分にして、それぞれの家を建てる、という案。共有の解消を建て替えのときに合わせてやっちまおう、というわけだ。甥っ子は別の土地に住まいをもち、「不在地主」「家あり子」のため、賃貸用戸建て住宅の建築資金回収後は「家賃」を収入にすればいい。

ただし、建物は自宅部分を大きくとり、賃貸部分を小さくする。といっても3LDK。東京区部では需要がありながらこの戸建賃貸は物件の供給量が少ない。地方から東京で働くために家族で引っ越してくる優秀なサラリーマンは実は多い。地方で4年間単身赴任して東京との賃金格差が想像以上で愕然とした。大手企業が彼らのためにそうした住宅を借り上げている。


ヘーベルさんはたしかにたくましく頼りがいがある。ただ、「たくましいがゆえに」今後どうなるかわからない子どもたちの生活スタイルに鎖や重りをつけることにならないか、そんなことも思っていた。堅牢な建物、10ⅿ 打ち込まれた杭がそのまま欠点となる。子供たちの生活スタイルの変化のなかで邪魔になるのではないか。確かに建物の中の間取りの変更はできるけれど、建物そのものの可変性、流動性の問題。解体にお金のかかるビルを相続されるより新たな用途に使える簡易建物のほうががいいとか。


東京の住宅は歴史的に劣悪で「大正時代でもその3分の一は長屋(10戸~20戸が連なる共同住宅が狭い路地を挟んで連なる)「江戸東京まち歩きブック」)」でそれが改善されるのには関東大震災を待たなければならなかったとされます。


大学のゼミの先輩のお姉さんがイギリス人と結婚しイングランド中部のバーミンガムに住んでおり訪ねたことがある。江戸同様路地の狭い木造家屋密集地だったロンドンも1666年に焼失(パン屋のかまどから火が出た)し以後木造建築が禁止され石やレンガ造りの町並みに生まれ変わったわけだけど、そのバーミンガムのお宅も「江戸時代に造られたもの」と聞かされびっくり仰天したものだ。お風呂やトイレは水が頼りなく流れる骨とう品だったけれど。


B29にまる焼けにされてもレンガやブロックづくりにしなかった東京の住宅。比較的木材が手に入りやすいこともあってか住宅がいまだ木造が主流なのは度重なる地震にやられても「やられたら建て直す」というあきらめが家づくりの考え方の底流にあるからなのだろうか。

その諦めに敢然と立ち向かっているのがヘーベルさんだが、なにしろ10mの杭と鉄骨で堅牢といはいえ敷居が高く、予算的に私たちには分不相応といえるかもしれない。



敷地はひとつとみて建蔽率をあてはめ、母屋のほうをを大きくする。するとそれぞれの土地の持ち分½との調整が必要となる

 

等価交換。

 

土地の持ち分と建物を交換する。賃貸棟建築費相当額と土地の相当額を交換する。すると、それぞれの土地建物は各自の判断で売却するなり、貸すなりできるのではないか。甥っ子は今災害地の復興がらみの仕事をしているがいずれ東京で家族と住みたいといいだすやもしれない。生まれた家だもんね。


権利関係のボタンのかけ違いは将来せっかく仲良しの子供たちに火種を残す。大手の提示する建築案ではこの問題は目をつむって先送りのままだった。(Hベルさんは贈与税の非課税枠を使った実現可能性をぼそっと話してくれたが、「贈与」は一方的な契約であってなじまない)


ともあれ、

戸建賃貸住宅には賃貸部分は自宅部分ほど手が込んだつくりにしなくても、あるいはロングライフにしなくてもいいのではないかという設計思想がベースにあって、10年ほどの短期スパンでの資金回収やその後の転用を前提としている。


世の中の賃貸物件は自宅部分を手厚くするかわりに徹底的にコストカットし投下資金をできるだけ早く回収しようとして造られている。娘の入居している最大手ハウスメーカーの物件は鉄骨新築の3Fでありながら、雨漏りがするわ台風の強風でゆらゆら揺れるわの散々なつくりであった。施主側のきびしいコスト面の要求もあるだろうが大手だからといって安心快適とはとてもいえないし、なにより危険である。それと同じことをやろうとしているわけだね。

せっかくの家が「レゴ」みたいなおもちゃの家になってしまうが仕方ない。


モデルルームを周り、柱などを見せてもらう。

ジョンウエインのように逞しいヘーベルおじさんの鉄骨を視察してきたばかりなので、木造の柱がいかにも頼りなく、ふわふわやわやわの断熱材が泡あぶくのように見えてしまった、、、耐震強度3の関東大震災クラスの1回の地震に耐えうるでは気休めにもならない。

ただ、実際に住んでいる人から勧められるというのは信頼の証。2階部分の½の広さの収納スペースがそれぞれの棟にとることができる固定階段収納もうれしい。ほっとする。この「固定階段」が大切なのだ、と知人はいう。

 

 


家づくりというのはいま住み替える家族の、そしてこれから住むかもしれない家族のこと、増えるかもしれない家族や減っていくであろう家族(わしらのことじゃい!)のことを見越したうえで大きくは東京の将来のこと、身近なことでは13歳になるにゃんたちのことなど考えうるあらゆる可能性を加味しながらやらんといかん。


そのためのベストなプランを、家族の求める未来の住まいを寝耳に水のような形で提案するのが優秀なセールスマンであろう。

そのためにはまず、セールスマンは正直であること。そして他社をけなさないこと。

逆に私たちにも守るべきルールが必要だ。各社に依頼し提案のさいに作成してくれたプランニング資料は他社に提示するのはもってのほか、絶対に一切見せないと決めて交渉に臨んでいる。設計士や測量士たちがどんなに時間と労力をかけ、知恵を絞り、汗をかき作成してくれたものであるかひと目見ればわかるからである。フェアでないからである。


注文住宅は建物に人が住むのではなく、人が建物に住むものだから。

人だけでなくうさぎや象も住んでいる。

まだまだ道のりは長い。

2018.12.7

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

1 Comments

  1. 悩む所が多いですね。
    何せ高い買い物ですから。
    でもそうやって沢山悩んで勉強して、良い家が出来上がっていくのですね。
    これから第2章、3章とどう変化して行くでしょうか。
    楽しみです。

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