
これまでぼくを歌舞伎から遠ざけていた理由のひとつは「女形」だった。今回の演目で楽しみにしていたのが二部のあの油井正雪「慶安の変」を題材にした「丸橋忠弥」と「芝浜の皮財布」。
落語でおなじみの芝浜、は中村獅童の女房役をあの寺島しのぶが演じている。
素朴な疑問、「歌舞伎って女性も舞台に立ってもいいの?」
市川團十郎の娘の「ぼたん」」ちゃんはどうなの?
答えは「だめというわけではない」とのこと。
だったらもっと女性のいい役者を使えばいい。
いつもそうだけど、女形が無理して高くうわずった声でおかみさん役をやるたびに、志村けんを思いだしていた。
しのぶさんの、リアル女性の声を聞いたとき、正直「ほっとした」。
この共演が実現したのは七代目菊五郎の提案だったとか。
あぁ、あれが藤純子さんの娘さん、尾上眞秀のおかあさんか。
高倉健さんと、藤純子さんの矢野竜子ものにはお世話になった。
獅童のとこの二人の男の子も丁稚と小僧で登場。
おとうと同じように臆することなくせいいっぱいの大きな声で、堂々としたもんだ。
こんど観たとき、きっと大きくなってたくましくなっている姿に驚かされるだろう。
男の子の孫ふたりと重なる。

市川中車はその後銀座のクラブで騒いでないのだろうか?
6月に封切られた「国宝」もいまだロングラン中。
作中、いくつかの演目がすでに鑑賞したことのある、つまり人気の作品だった。
映画界にとっても、歌舞伎界にとっても、そして自分にとっても今年は特別な年になった。
