東映任侠映画にまつわる舞台裏が覗けて楽しい。監督、プロデューサー、カメラマン、俳優、いずれ劣らず個性的で、こだわりのある癖のある人ばかりで、映画と同様体と意地を張り合いながら撮影してきたのだ。だから、目の離せない体が火照る作品ができる。鶴田浩二、佐久間良子、大木実、そして任侠映画の生みの親でプロデューサー俊藤浩滋とその娘藤純子。
これは監督降旗康男作品と主演高倉健のエピソードなどがまとめられている。降旗監督は松本の殿様の家柄で、優しそうな気弱なおじさんにしか見えないが、陰のある訳ありの男を情感たっぷりに描くことのできる監督だ。東大文学部仏文科を卒業、昭和32年に東映に入社し、新網走番外地シリーズのうち6本を手がけている。監督デビュー作品が「非行少女ヨーコ」昭和41年我々が10歳のとき。
大木実。任侠映画にこの人の存在が光る。へんな表現ではあるが良識あるやくざを演じたらこの人にかなわないのではないだろうか。持って生まれた品と人間性を感じる。
もう1人、任侠映画に欠かせない名和宏。敵役ではあるが悪役ではないきりりとした演技が任侠の世界を絵画のように額縁に収める。