先日吉祥寺で久々に飲み友と一杯やった。幕末の長州藩の志士のように声をひそめてお互い定年後の行く末を案じ、語り合った。
とはいえ、友人は剣道の入団審査の帰りで武具を携えていた。剣道七段なのである。凛としたたたずまい、きりっとした所作、目元すずしく緊張感がただよっている。
いっぽうのおやじはUNIQLOのゆる~い普段着にクロックスというあっぱっぱでラフないでたち。若者の人気の吉祥寺である。そんな街に溶け込んでいるおやじと「剣道」。若者の街、ファッショナブルな街として人気だが、おやじを安心させくつろがせる安居酒屋が駅前にあり「剣道」とはここで一杯やるのがおきまりだった。
「清瀧酒場」という。埼玉蓮田の酒蔵が良心的に経営しており、ふぐのひれ酒も置いてある。かんじんの日本酒は「それほどでもない」との評判の残念な蔵元酒場である。剣道はそのひれ酒をちびちびやりながら、共通の友人の話をしだした。
「よこちん」、という。
「剣道」は「よこちん」の操縦するヘリコプターに乗って東京都心上空を遊覧した、というのだ。
よこちんは職場の後輩だが、定年を前に退職していた。かわりものだったが人気者だった。まさか、ヘリコプターの免許をとっていたとは!
東京上空は飛行空域が厳しく高度に注意しながらの操縦で、燃料代は割り勘で2万円ほどだった、という。私が同乗してたらよこちんの操縦に景色を楽しむどころではなく、スリルを味わいにいくようなものだと思う。仕事中もらりっている部下だったからである。あやしい男だから免許を取ったのだと思う。
おりから、剣道連盟で最上位剣道八段の段位を昇段審査のさいに審査員から現金を払うように要求されたとの告発を受けたとの週刊誌の毒蝮三太夫の記事を話題にした。要求額は650万円。道場をを開けば元がとれるというのだ。剣道に確かめると本当だという。段位を返上してけりがついたとも。
そして、おやじは不用意に発言した。
「七段とるときはいくらだったん?」
すると剣道の顔に殺気がみなぎり、竹刀に手が伸びた。とっさに身をかわしよけたものの、振り上げたその刀先は清瀧酒場の油にまみれた柱にくいこんだ。
右の打ち込んでいるのが剣道
これを「吉祥寺清瀧屋事件」という。そして薩長連合はあえなく瓦解した。これから日本はどう進むべきか、定年後の生活設計、家の建て替え、次に何を注文するか、焼酎は芋か麦か、さかんに議論していた矢先のことである。残念でならない。
いまでも地下の靴置き場左の店内の柱には傷跡が残り、見学ができるようになっている。
剣道では勝ち目はなかったが毒蝮三太夫ほどではないが毒舌では勝っていた。竹刀さえとりあげれば楽勝だったが楽しげな酒席でいらんことを言う癖があったのが命取りとなった。
なにかしら武器をもちたいと思う。もう一人の同僚はかつて映画監督をめざし、メガホンを振っていた。今年の7月の退職とともに東映練馬大泉撮影所のそばに移り住んだ。そこには徒歩数分でいけるシネマコンプレックスがある。思う存分シニア割引使い放題である。何日でも映画の話ができる男である。おやじはせいぜい2時間くらいである。
自称関係者であるおやじは「うっす!」と片手をあげれば入れるかも。2018.11.24
焼肉「叙々苑」、「ピエトロ」、海鮮回転寿司「三崎港」もあるよ。
T-Joyシネマ練馬大泉
エントランスには健さんの右手が!
小百合さまのしなやかな右手も! 2018.11.24
定年後はやりたいことをやろう。いままでおさえてきたことを自由に!
2018.11