人生初のインフルエンザA型を宣告され5日間の外出禁止自宅謹慎処分となった。そうはいっても一人で別宅に来ているため食材を買いにでないといけない。許してくださいと近くにコンビニ弁当を買いにいく。息をとめ、選んだお弁当とパン以外に手を触れず店員にも言葉も交わさず不愛想に店を出る。
そして家に帰り、WOWOWやJ-COM 専門チャンネルで録画したはいいが観るのが追い付かなかったりしてたまりにたまった数百枚の映画の整理をすることにした。「そして父になる」は置きっぱなしで見逃した話題の1作。定年直後はじつは現役時代に先送りしてきたやり残しや積み残しを見直し整理する時間を与えてくれる貴重な時期。自宅謹慎処分期間はそのいい機会だ。
是枝監督はご存知の通り「万引き家族」で高い評価を受けた監督。その時代の瞬間の「家族」描いている監督といえるかもしれない。「万引きは」はまだ見ていないのでえらそうなことはいえないけどね。6歳まで育てたわが子は病院で取り違えられた他人の子供だった。その赤ちゃんの取り違いをきっかけに「家族のありかた」や「子供にとっての幸せと親や大人が描く幸せ像とのすきま」、「母親以外にはわかりあえない母性」に気づき、そして接近していくというすじがきだね。
タワーマンションに住むエリートサラリーマンの福山雅治と妻の尾野真千子、そのひとりっこのけいたくん。いっぽうの地方都市で電気工事店を営むリリーフランキーと真木よう子とりゅうせいくんとその兄弟の家族。その交流の中で、東京の豊かではあるが福山一家の乾いた幸せ、豊かではないけれど自然豊かな町でつつましい幸せに包まれて暮らす家族。福山はリリーフランキーの家族に馴染んでいくけいたくんの子供らしいほんとうの笑顔をそこに見つけることになる。
ゴールドベルク協奏曲が家族の重しのように流れている。2013年製作。