仮住まいの誘惑

新居が完成する2020年の2月まで仮住まいをすることになった。車が通ることもない静かな住宅街の一軒家であることはいいのだけど、なにしろ窮屈で手狭なうえにお隣とくっついて建っているものだから、私の部屋の窓とお隣の居間の窓は2メートルほどしか離れていない。

新居の設計の時に窓がお隣の窓と真正面で向かい合わないように建築業者は神経質になっていたのがわかった。


お隣には4歳くらいの女の子がいて、甲高い声が聞こえてくる。

4歳くらいの女の子というのは「おしゃべりするために生まれてきた」ような生きもので起きているあいだ中なにかしらしゃべっている。

私の1週間分をほぼ1日でしゃべってしまうほどで、エアコンがいらなくなって窓をあけるようになったこの季節にはストレートにかわいい生声が聞こえてくる。そして、女の子は居間のカーテン越しの窓からこっそり興味津々にこっちの様子をうかがうときがある。「なんかおもしろいことがないか」を探すのが日々のお仕事といってもよくあちこち徘徊しておりそれは親であろうと先生であろうとだれにも止められない。

うかつに手を振り微笑み返しでもしようものなら、「へんなおじさんがいる」と交流がエスカレートしいじられるようになるのは間違いなく、面白がられても困るし死角に身を置き目をあわせず死んだふりをしている。いつまで身を隠せるか不安だが徳川慶喜が謹慎した部屋「葵の間」だと思って蟄居したい。


石神井川に沿って桜並木が延々と続く道を通って駅に向かう。


カモのつがいが泳ぐ姿を眺めながら水のある風景を楽しむ。

一つ隣の駅が最寄りの駅となった。駅前には地主さんの豪邸がある。この高架の新駅ができるときに用地を提供されたのだろうか。宅地化が進んだとはいえ戦前からの農地の名残がいたるところにある練馬。

2019.10.15

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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