韮崎から北に向かい山を登ること数十分でラジウム温泉「増富温泉」に到着する。
たぬきや鹿がでる秘湯系かと思っていたが想像していたより巨大な体育館のような堂々の日帰り温泉施設。
八ヶ岳らしいどこまでも青く澄んだ冬の空。
入湯料は北杜市以外にお住まいの方830円、北杜市にお住まいの方だと510円。
こころは何十年も前から通いつめて長坂町民、北杜市民なんだけどなぁ。北杜市内の温泉施設のほとんどは市民に限り半額となり、市民はわしらは特別に優待されているという思いに浸りながら温泉に浸っている様子だ。
ここで声を大にしていいたい。みんなの声を代表して叫びたい。
北杜市の温泉担当者さんたちは市外の外様市民、都民たちがどんな思いで自動販売機のチケットの「北杜市外のかた」ボタンを押しているかご存じだろうか?
あの屈辱的な、屈折した、鬱屈したやるせない思い。おんなじ人間がおんなじ温泉に入る行為ではないのか?なんど苦々しく悔しい思いをしたことか。
「尾白の湯」も、「ゆーぷるにらさき」もそうだった。「高根の湯」も「泉温泉健康センター」もそうだった。みんなしてスクラム組んでフッカー高根、ロックの尾白、スクラムハーフのゆーぷるが市民料金にさせまいと立ちはだかる。
わかった。なんのためにこうした区別をしているか。「住民税を納めている、納めてきた」「市民の方々には銭湯ほどの料金でちょくちょく楽しんでもらいたい」とかいうもっともらしい理由ではない。
住民に「北杜市に住んでいてしみじみよかった」と思わせるためだ!
もっと進んで、北杜市に住んでない人にはくやしかったら市民になれば?とおいでおいでしているのではないか。
以前友人たちと長坂の温泉(「北杜市」などという地名変更にいまだに違和感がある)にくるたびに幾度となく「市民だったらいいのになぁ」とつぶやいていた。そのぼやきやつぶやきが一定の回数を超え、ふつふつとした思いが満ち満ちて臨界を超えるとおやじのように「別荘」とか「移住」ということも考え始めるのではないか。
そこまでいかなくても「北杜市にきてよかったとしみじみ感謝している」おやじにもわけへだてなく相応の対応をしてほしい。つのる思いをやさしく受けとめてほしい。「北杜市民になりたいのはやまやまだけどそうはいかない事情がある」枠とか「総理大臣主催・温泉を楽しむ会招待コード番号60」枠とかで。
だから、「市民」と「市外」の縦割り行政ではなく、「市民等」とし、「北杜市を愛してやまない方々」を含めるとかなんとか特例を設けるとか知恵を絞ってくれないもんだろうか。消費税法とか相続税法とかは特例だらけだ。ぜひ見習ってほしい。
自動販売機の設定変更がいやなら、スーパーなんかのお酒の販売の時の「あなたは20歳以上ですか」パネルの「はい」を指さすやりかた(ばかばかしいことこの上ないが)があるではありませんか。自己申告。
日本国民みな兄弟ではないのか?政治家や行政は差別をなくそうと取り組んできたのではないか?人種差別ではないのか?ローマ帝国の正式な市民と植民地の異邦人に横たわる差別、そんなことまで思いが及ぶ。
ほんとなら830円の半額は415円だけど510円としたところに「増富の湯」の秘密が隠されている。市民であっても「この茶色いぬるめの温泉は95円分特別だ」ということを思い知ってもらいたい、という意思表示が明確にあらわれている「特別案件温泉」。
10時のオープンに合わせていちばんのりしてのぞいてみると、
すでに、高い天井まで湯気が霧のようにもうもうとたちこめている。
中央に相撲の土俵をひとまわり小さくしたくらいの大きさの源泉がちょろちょろ湧き出る湯船があって、ご常連さんであろうおじいさまたちが露天風呂には目もくれずここを目指して次々と入ってくる。
源泉は頼りなくちょろちょろでてくるから猫のようにまどろんで安心してくつろいでいると、ときどきふがーっとまとめて噴き出す時があって、「おれはいちおう源泉かけながしだからなめんなよ」と言っているようだった。
いかにも効能がありそうな茶色の温泉で、ぬるめの38度だもんだから20分でも30分でも半分眠りながらでも浸かっていられる。
お湯はちょうど水道の土管工事したあとに出てくる濁り水のような茶色。
八ヶ岳の冬は寒いは寒いが零下になっても凍える寒さではないな、といつも思う。だからこの冬場の八ヶ岳ブルーの青空ときりっとした冷気の組み合わせが一番好きだ。
ホールには見た目からして暖かい薪ストーブが置かれ温泉好きの客を出迎えてくれる。なるほど石を乗せることで蓄熱効果があるわけだ。
2019/12/14
朝、まだ暗いうちに白州でお茶や炊飯、料理用の天然水を大量に汲む。これで安心して(?)正月を迎えられる。
韮崎から甲府に向かって西から東に国道20号線を車で通勤する人たちは雪に覆われた美しい端正な円錐形の富士山を眺めながら運転することができる。うらやましい。
東京の通勤と大違いだなぁ。
2019/12/15
そして、いきつけの韮崎のガストで朝食兼お仕事の時間を過ごす。
長いこと24時間営業だったのが朝7時からとなってしまい開店時間まで調整しなくてはならず残念。
従業員の負担軽減のためという世の中の流れだから致し方ないと納得する。開店前のガスト。
甲府の「草津の湯」で朝湯に入ってから帰ろう。