懐かしい先輩とあやしいマスク姿で小倉の街を徘徊する。後期高齢者に向けての予行演習も兼ねて。
市民の台所、旦過市場を流して歩く。
市場の入り口にある鯨の店は逆風をもろともせず頑固一徹に店を守る。もう大将も高齢者になって意地にも磨きがかかっているのだろう。
幼い頃、寒い冬に大根とこの鯨の皮の脂が膜を張ったやけどするほど熱い味噌汁をおばあちゃんにつくってもらったものだ。
おでん屋さん。懐かしい牛すじおでん。
きょうの目的地はやきとり「陣太鼓」
お客さんが入店すると、串をひっくり返す手を止めて、太鼓をどどどぉーんと叩く。
これは祇園太鼓をイメージさせようとしたアトラクションではあるが、忙しい時はそれどころではなくなって仕方なくやれやれ叩いている感じがにじんでくる。
太鼓に目をやるとまんなかへんが破れている。
そんな時はやけになっていて破れかぶれで叩くもんだから太鼓が破れてしまった、ということなのだろう。
北九州の焼き鳥屋はたいがい焼き鳥と刺身の二刀流となっている。
これは、巌流島の決闘の宮本武蔵の影響かもしれない。
この地では焼き鳥が美味しいのはあたりまえで刺身も同じくらいやすく新鮮でいいやつをださないと北九の客はぜったいに許しはしない。
ここで期待を裏切らず何十年焼き鳥屋をやることは渋谷でアイスクリーム屋をやることより遥かに難しい。
東京ではお目にかかれない豚バラともっちり甘いアオリイカの刺身、これを目指してやってきた。
「ねこまっしぐら」というペットフードがあるが、おいらもチャウチュールみたいにまっしぐらでやってきた。
これで620円。ビールは大瓶が380円だ。おもわず合掌。手を合わせる。ぐうの音もでない。
福岡のやきとりの実力は豚バラで判定することになっていて、その他の具材の良し悪しもこれで推し量ることができる。
東京のお金持は生活費の安い国に移住したりしている。
これをヒントに「東京で稼いで」、「北九州で生活する」という選択もあるかもしれない。家賃は半分、何しろ魚もうどんもおでんもおいしく安いのが魅力だ。
2021/4/2