軍艦武蔵〜手塚正己著〜

空き家となった実家でしばらくまとまった時間を自由に過ごせる。年明けから忙しくしていたためありがたく大事に使わせてもらいます。


ブックオフで買いだめておいた8冊のうちの1冊。

「軍艦武蔵」は上下巻のうち下巻だけが棚に並んでいた。本のことは知ってはいたが一巻3千円からの本のため購入は躊躇していた。下巻は航空機の支援のないまま米軍機にいいように雷撃され、無数の銃爆撃を受け沈没したことが当然ながら描かれている。


ブックオフでは当初891円だったのが、売れ残り税込210円ともってけどろぼうの在庫処分価格になって余生を送ろうと引き取り手を待っていた。

まことにありがたい。ブックオフはビジネスモデルとしては問題なしとはいえないものの、高価な本をお手軽に手にすることができる。


大和の影に隠れた2番艦としての誕生とその悲劇的な運命を克明に描いている。手塚さんは書き終えたあと、このように述べている。

当初から、記録のみを積み重ねたノンフィクションを書くつもりもなかった。さりとて勇壮かつ壮絶な戦記にも、あるいは反戦平和を唱えた小説にも興味はなかった。証言者から得た膨大な記憶といまに残された戦史資料を頼りに、ひたすら事実だけを追い求めて、原稿の升目を埋めていった。

同感である。最初から反戦ありきのトーンで貫かれたドキュメンタリーはイデオロギーが鼻につく。


さらに、こう結んでいる。

「武蔵」と出逢ってから本書を書き了えるまでに、十数年の歳月が経過した。私の四十代前半から五十代半ばまでのすべてを、「武蔵」の物語に注ぎ込んだ。


おそらく一巻600ページからなる本作はこれでもかと原稿を削って削ってようやく上下巻2冊でおさめたという経緯をたどったことだろう。

この気迫と使命感に圧倒される。


久留米ラーメンも、嬉野温泉も、アオリイカも、豚バラもなく原稿に向かっていた。

大和にせよ武蔵にせよ、6万5千トンの船によくぞこれだけの装甲と砲兵装を載せたといわれている。


ブックオフの本には購入者のレシートがそのまま挟まっていることがある。

阿佐ヶ谷の「書楽」という書店で2015年に2916円で購入されたもの。


おいらのように欲しいけど値段にたじろぎ諦めた人ではない。年配の海軍の関係者かも知れない。戦史研究家かもしれない。なにかしら強い意志を持って購入された方に違いない。


薄給のなか、他を節約してでも欲しいものを定価で手に入れる。これが王道。

 

欲しかったが定価では高くて手がでず、891でブックオフに並んだときに買う。これは中道。

最終処分価格の210円になるのを待って買う。これは邪道で外道だけど、手塚さんの思いに触れようとしている姿勢だけは評価できるため、努力賞をあげる。

買わないよりいいですよね。

2021/4/6

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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