「親愛なる春日中佐殿
両国間の戦争が終結して以来このかた、私はいつの日か、貴官に連絡を取り、1945年7月18日の夕刻、貴官の指揮しておられた神風と、私の艦ホークビルの戦闘に関し、貴官の側から見た真実を知りたいと考え、かつ望んでおりました」
「貴艦には引き続き48時間以内に、最低5隻以上の潜水艦から魚雷攻撃がおこなわれたはずですが、貴艦に対する攻撃は1つも成功しておりません。
1945年7月18,19,20日に貴艦を攻撃した潜水艦の艦長一同は、よくこの時のことを話題にし、貴官の操艦技術の素晴らしかったことを話し合ったものです。
貴官こそ、両国の戦争期間を通じて巡りあった中で、最も熟練した駆逐艦艦長であったという所見を、たくさんの艦長が述べているのを耳にしています。
貴官に敬礼いたします。
神風こそ、まことに勇敢な艦であり、価値ある敵手でありました。
私のこの願いが面倒なことであり、また不愉快なことであろう事は存じておりますが、私が興味を持っている点は、純粋に技術的なことであり、悲しむべき日々のことを掘り起こすつもりは全くないことをお約束申し上げます」
「日本が戦争の灰の中から立ち上がり、偉大な世界の力に再びなったことは、あなた方の非常な喜びとなるでしょう。私は再び世界に大戦争がおきないことを熱心に祈っていますが、空しい希望になることを恐れています。もし、再びそういうことになったら、我々は今度は同じ側に立ちましょう。
お幸せに!
あなたの古き敵であり、新しい友より」
アメリカの潜水艦艦長スキャンランド大佐から敵国の駆逐艦の艦長春日中佐にあてた胸が熱くなる手紙。
菅総理のその場しのぎのいいわけや自己弁護に満ちたとりまき連中の政治家や官僚にはとても書けない誠実な文章においらのこころにさわやかであたたかい風が吹き抜けた。
死闘を演じ死を覚悟した潜水艦艦長から敵の駆逐艦艦長に対する純粋な敬意と不幸な大戦終結後のまざりけのない平和への思いが武人らしい潔さで綴られている。
この死闘は潜水艦映画の最高峰である「深く静かに潜航せよ」とならぶ名作「眼下の敵」のモデルとなった。
力をつけ暴走し始めた中国や毒殺暗殺国家ロシアとの緊張のなか、いろんな思いがよぎる。
ウクライナ問題も最近知ったのだが、スターリン時代の農業政策の失敗で餓死者500万人をだしていることぬきに語れない。
トランプが去ったことでアメリカは目を覚ましたかもしれない。悪い夢をみたのだと思う。
平然と原爆投下を命じたトルーマンや、B29による日本民族焼き尽くし作戦を指揮したルメイやアーノルドは別としてスキャンランド艦長のような高潔な武人をいただき日本と戦ったアメリカをわたしはまだ信じていたい。
2021/5/3
戦争の是非はともかく、駆逐艦「神風」が再三にわたる魚雷攻撃を回避できたのは春日艦長のもとよく訓練されたおとうさまたち乗員あってのことです。終戦まで戦い抜いた駆逐艦「雪風」と同じように。当時のことをお話しされなかったとしても戦闘という極限状態で心に刻んだ思いは知らず知らずのうちに子供たちに受け継がれてきたことでしょう。思いあたることはあるはずですよ。散っていった戦友をよそに生き残ってしまった自分を責め続けた人たちが戦争の荒廃からいまの日本の繁栄を築いたと思っております。コメントありがとうございました。
はじめまして。私は「神風」に乗っていた父の次男として昭和28年に産まれました。20年ほど前、偶然「艦長たちの太平洋戦争」と言う単行本を古本屋で見つけました。
その中で春日艦長の語る「神風」と米潜水艦との死闘について、初めて知りました。当時、もし、春日氏が艦長でなかったら、おそらく私の父は生還することが出来なかったと思います。
生前、父はシンガポールでの捕虜生活の話以外、戦争の話はほとんどしませんでした。
今さらにはなりますが、この歳になり、改めて私が生かされている意味を考えているところです。