異変が起きた。
立ち上げた後、Windowsがシステムダウンを繰り返すようになった。なぜだろう。
しばらく最高スペックのPCとして「やっぱすごいやつだ」と鼻高々の息子だった。
ある日不具合が発生した。
ケースをあけて配線の具合、ケーブルの干渉などチェックしたが特に問題は見当たらない。
おまえさん、最近なんかしたと?
思いあたることは、廃車ならぬ廃PCのなかのSSDを取り出し再利用しようとこのPCに接続していたことぐらい。
ただこの「ことぐらい」に原因があるようだった。
近所にあるぼったくりショップのPCデポに修理を依頼することはプライドが許さない。
ハードディスクには2種類あって、MBR(プログラムの起動・マスターブートレコード」として使うかデータの保存場所(倉庫・ストレージ)として使うか生まれたときに決められる。
ミニATXのPCから取り出したSSDはこのMBRでデータの中にWindows10のプログラムが格納されている。もちろんそれはがってん承知の助で、まるごとフォーマットしてやればいいんやないととたかをくくっていた。
ところがこれは極めて重要な起動プログラムであるゆえ、削除、フォーマットはまかりならんとウインドウズのシステムの管理部門からストップがかかる。
自分で自分を壊させないように、自傷させないように、手をだせないようにシステムは設計されている。
これまでのBIOSセットアップでは起動プログラムの立ち上げはどの順番で行うか設定する画面があった。第一順位はCドライブのディスク、第二順位はCD-ROM、第三順位はUSB、というぐあいに。
しかし、今回のマザボには設定画面はみあたらず、最初から内蔵SSD が既定のものとされている。命令はわきめもふらず内蔵SSD に向かう。したがってこのPCは起動するとき再利用したSSDに起動命令をだすとは思えなかった。
この「思わなかった」とか「思えなかった」が人生すべからくまちがいのもとだった。
ようするに、この新PCは電源を入れると、まずWINDOWS11で起きようとするのだけど、どうも追加したSSDのなかで眠っているWINDOWS10のプログラムに気づき、めまいがしてシステムの異常を訴えていたのだった。
WINDOWS10にも意地があってぼくはまだ健在です、生きてます、まだやれますと世代交代を認めないようだった。ちゃちゃをいれていたのだった。いやWINDOWS10は女子で、あたらしい彼女イレブンにのりかえたあんたを恨んでじゃまをしていたのだった。
MBRディスクをただのディスクにするのにはまた、このPCの管理画面ではできず、あの「MiniTool Partition Wizard」のたすけがいる。ディスクの変換をしてただの倉庫にしてあげないといけない。
パソコン界同様、人間には心臓はふたついらない。おくさんはひとりときまっている。
肺も腎臓はふたつづつで、脳や心臓や肝臓や胃なんかはひとつづつ。なぜか。人間の設計図を描いた人の納得のいく説明を聞きたい。
それに、生まれながらにして脳となるか心臓となるか定められる身分制度は問題があるような気がする。身分格差による差別も厳然と存在する。男と女の固有の臓器もあるが自分が思っているほど位は高くないかもしれない。あってもなくても命に別条がないからかもしれないし、認めたくはなかろうがやがてその役割を終える日もくる。
心臓はひとつでもいいけどおくさんはふたりでもいいような気がする。徳川の将軍たちを見よ、11代将軍家斉は53人の側室がいた(正確な人数はわからんといわれている)。それに徳川家の血が絶えないよう御三家まで用意する周到さ。弁護士もどきで苦労した宮内庁にももっと真剣に対応してもらいたい。
水戸藩は天皇家とのかかわりが深い。姻戚関係を結んでいる。なんとなれば、徳川が滅亡の危機に瀕するとき天皇家や公家と合体し延命できるようなシステムを用意していた。徳川慶喜も水戸藩。なんという周到さ。
Windows7家はお家取りつぶしにあい滅んだ。8家もそう長くはない。10家と11家はいってみれば兄弟程度でさして違いはない。