最近でた文庫本によれば東京芸術大学の卒業生の何割かは「行方不明」とのことだ。
わかる気がする。
サラリーマンとして、あるいは経営者としてこの社会で安泰に暮らしていくことなどはなから眼中にないのではないか。そうした浮世の知恵は欠如しているのではないか。
老後や、貯金や年金を、病院通いなどを心配してちまちました高齢者雑誌となりさがった「週刊現代」(もともとなりさがっていたおやじ雑誌だったような気もするが)を読み、どう賢く(せこく)暮らしたらいいかなどと思いをめぐらすことなどないのではないか。
ちまちましたおいらのささやかな楽しみは歌川広重や葛飾北斎などの名所絵をながめて、江戸の昔の旅をすることだ。
この「ちいさな美術館」は一枚一枚が絵葉書として使えるようになっていて和紙のような、障子や行燈のような紙質だことに惹かれた。
西洋絵画にはないぼやけて、かすんで、ぼんやりとした湿気の多い暮らしが見える。空の青さも、海岸も、街並みも月明かりももっともっと情緒があったろうと思う。
幼いころ見た山陰本線の急行や特急の車窓から眺めた海岸線の景色と重なる。
江戸百景のいまの景色と対比した解説本があるけれど私にとってはさして意味がない。
ひととおり任侠映画を見終えたいま西部劇にはまっている。開拓時代の中西部の小さな町を舞台にくりひろげられるならずものとの闘いや事件。
何もない退屈な街に暮らす美人の奥さんと男の子たちは苦しい生活の中にあっても家族を守り、悪に立ち向かうたくましいおとうさんを尊敬している。
「宇宙家族ロビンソン」というシリーズもののTV番組があった。そこにでてくるロビンソン一家の父親がアメリカの家族の典型としてずるがしこい医者のザックレースミスとの対比の中で描かれている。
思えば宇宙船にならずものやへんてこりんやけったいなやつがふらっと日替わりでやってきてひと騒動を起こすところは西部劇そのものだったなぁ。
ザックレースミスがおとうだったらと思うとぞっとするが、「親がちゃ」の世界でもありそんときはそんときだ。
「正義」と「ヒーロー」あたりがアメリカの男たちのめざすキーワードだろうか。
この名所絵を鑑賞するときは
「アダチ版画」さんのサイトの解説が役に立つ。ありきたりでないマニアックな解説がある。作者が意図して残したちいさな「暗示」を見逃さない。
歌川広重|絵師でえらぶ|浮世絵のアダチ版画 (adachi-hanga.com)
原版のほとんどが「東京芸術大学」所蔵となっている。
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