この界隈はとても素通りできるものではない。
仕事場のある皇居前の竹橋からお茶の水までの途上に立ちはだかる。
この日はこの魔窟に吸い込まれた。「書泉グランデ」。
一見入口はふつーの大型書店のように見えるがそうではない。
1階こそふつーの本屋を装ってはいるもののミリタリー、鉄道、プロレス、野球などに特化したあきれてものが言えない本屋である。
地球や超自然現象などにも興味があるようだ。
アキバにもある「オタク御用達ブックセンター」である。
本日店頭のいちばん目に付くところに飾られていたのがこれで、
ガラス越しに横に5冊も並べてあって、いかに期待されて復刻されたかを訴えている。
これを目にしたが最後、店に吸い込まれた。
これがあれば、紫電改を操縦できるし、機体の整備もできる。P51ムスタングとも互角に戦える。
ただし、9,000円、、、立ち読みもできず、詳細は不明。
この本屋のどうしようもないところは、
「戦車が横転したときに起こすためのマニュアル」や「戦場でのストレスコントロールの仕方」など日常生活で役に立つ情報が得られるところで、もうあんたの好きにすればといいたくなる。
ぼくは大学1年の時横須賀市追浜に住んでいた。
横浜と横須賀の境界にある京浜急行の駅から商店街をはさんでまっすぐ伸びる道をいくと日産自動車の工場があった。
そこにはかつて海軍の飛行場があったことをのちに知ることになる。そして海軍航空技術廠も併設されていたことも。
そのときの様子を知りたければこれが役に立つ。
そして、去年発刊されたおなじみ碇さんの渾身の作「海軍空技廠」をかごに入れる。
立川にあった陸軍の航空技術研究所にくらべると語られることの少なかった海軍の研究所。
この高速戦闘爆撃機「銀河」を開発した技術が新幹線に生かされた。
こんな売り場をうろつくひとがいるんだろうか?
売れるんだろうか?だれが買うんだろうか?
となりでぶつぶつひとりごとをいっている若者がいた。
それと大学教授のような研究者風の紳士もいた。
池袋はなくなってもいいけど、あきばと神保町とは離れたくない。すぐにでもいけるとことに住んでいたい。
そしてこの界隈は爆撃をまぬがれた昭和があちこちに残っている。
さかなやさんもしぶとく生き残っている。
すずらん通りにあった行列必至の洋食屋「南海キッチン」も場所をかえて営業している。
学生街らしくライスはほかの店の大盛りをさらに5割増ししたくらい大盛りで、たまらず「半分にしてください」と叫んだ。
それでも多すぎるためさらに半分にしてもらったら、でっぷりしたお姉さんに怪訝そうな顔をされた。
もう、ぼくが食事をするような店じゃないことを悟った瞬間。
中国料理をはじめ、インド、ブラジル、スペイン、エチオピアなど多国籍な名店が多数。
ビルに挟まれ窮屈そうにしている。地上げに抗い中央に傾いてスクラムを組んでいるよう。