オリーブオイルに「BOSCO」という商品がある。イタリア語で「森」のこと。
わたしが八ヶ岳にはまって毎月のように山荘に通っていたとき、偶然小平に住んでいた職場の先輩ご夫妻が自宅を引き払って山荘の近くに移住してきた。もう20年くらい前のことだ。
おやじが亡くなった2月も山荘で知らせを受けた。
先輩がおくさまに引きずられ移住をしたことはこの山荘におくさまの夢だったアトリエが併設されていたことですぐにわかった。
「アトリエに住まいを併設した」といったほうが正しい。
まわりは八ヶ岳の原生林がひろがり、先輩は毎日愛犬をつれて散歩していた。
小平のアスファルトの道を散歩するのとは大違いなしあわせなわんこだった。
いっしょに散歩させてもらい「りこぼう」というきのこをみつけて、みそ汁にした。
あるときこれまた職場の後輩が野菜づくりにはまり、このアトリエのちかくに畑を借りて週末に八王子の自宅から通い始めた。
まったくの偶然。後輩はわたしの出身校のとなりの八幡中央高校を卒業していた。
みんなできゅうりをもいで、じゃがいもやさつまいもを掘り起こしもちかえった。土のついた野菜が持ち帰り放題だった。
裁判官は釣り好きが多いと聞く。われわれの職場と同様きびしい仕事には自分をリセットする時間と空間が必要なのだろう。
長坂のあたりは東京からの定年後の人たちがたくさん移り住んでいる。長年の会社勤めが体にしみていて退職はしたもののくたくたになっている雰囲気ですぐにわかる。
わたしも単身赴任がなければ山荘を譲り受けていただろう。
ただ、田舎暮らしでいやなのは料金が不明のプロパンガス(定価がなく業者が料金を勝手に設定している)だの、ガソリン、冬場の灯油代、月額1万以上の別荘管理費など。
やはり「借りる」とか「使わせてもらう」のがいちばんかな。
ホームセンターに行くと駐車場で先輩たちからかならず声をかけられる。
見慣れないステップワゴンの外観が改造車であることはすぐにわかるようで、どこで改造してもらったのか、いくらかかったのか、その使い方など尋ねられる。
そんなときは車内をお見せしながらいろんなことを話す。
夏のさわやかな暮らしをいちど覚えたらもう東京での暮らしはできなくなる。わたしは冬のほうが好きだったけれど。
ほうぼう歩き回ったけど山にすむならここ以外に考えられない。
ようやくいろいろ訪れてみようと思えるようになってきた。
みごとな作品。愛犬の「チャー」は元気にしているだろうか。八ヶ岳のふもとでのこんな暮らしもいいなぁ~