10年も乗り続けた愛車のFIT SHUTTLEをいよいよ手放す。
96,800キロ。もういいでしょう。安全上これ以上孫たちを乗せてこの車で遠出をさせるのはじいじとして忍びない。
あたりまえだけどステップワゴンのスムーズな加速、馬力、静粛性、燃費、快適さなどあらゆる面で敵わない。
戦争末期のゼロ戦とP51ムスタングくらい違うけれど、この車はゼロ戦21型といってもいいくらいの名車だった。
そして、定年前の5年間の数えきれないくらいの思い出も車に積んでいる。
手放すにあたり、HONDAのディーラーにも前もってその旨を入れておく。
いくらにもならないのは承知の上だがやるだけやるべ。
高値で買い取ってもらうために、①まず近所の業界1位Bモーターに査定してもらい、まず最初にどのくらいの値がつくものかの相場感を得る。
そして②中古車一括査定サイトで情報を流す。③そこで手を挙げたショップに現物を5社程度に査定してもらう。
④そこでの評価をもとに金額のみならずその会社の信用度、オーナーへのよりそいかた(*´ω`*)などを今度はぼくが業者をきびしくチェックしたうえで絞りこむ。
⑤業者同士による情け無用の最終決戦ガチバトルをさせる。
心得としては
即決しない。「いまここで決めてもらえたら〇〇円までがんばります!」の「いまここで攻撃」には毅然とした態度で臨み各社の査定が一巡するまで屈しない。口説くことはあっても口説かれる経験がないものっすからね(*´ω`*)
査定は1日のみで、5社以上の見積もりは意味がないと判断した。
そして、チャレンジャーには査定の前後には関係なく公平にチャンスを与える。
夜明け前の4時にネットで査定依頼したところ、電話がくるわくるわ。
さっそく朝7時半に電話があって、家族に何かあったかと思っておそるおそる電話にでると「おくるまをぜひみさせてほしい」という。しかもきょうにも、と。
そしてつぎつぎに連絡が入り当日一気に6社にみてもらうことになった。それ以上はお断りした。
あさイチで査定の予約の連絡がはいる意味を理解した。先手必勝だった。
いま、新車は部品の供給や工場の稼働率の低下などで発注しても納車が1年待ち。
中古車市場は空前のたま不足でバイヤーのみなさんの気迫と気合がすごい。
はじめて車を購入する層にこの後期高齢車は安くてぶつけて平気で人気だそうだ。
査定と交渉には1時間かかる場合もあり、1日6件が限度かな。
最初に査定してもらったBモーターの提示金額を下回るならば査定は不要とあらかじめおことわりしたうえでなおやる気満々なファイターだけに絞る。2社が脱落した。
Bモーターの担当者は若くきれいな子だったが、まず、開口一番あなたの車はネットオークションサイトではこれくらいの評価にしかならない、HONDAのディーラーに買取を依頼しても引き取ってくれるかもしれないがほとんど値がつかないどころが引き取り費用がでるかもしれない、そして、ほかの業者の評価も知りたいというとあからさまに嫌な顔した。ここでも「囲い込み」をする。
そして、自分は今月の販売目標に達しておらず、なんとか売っていただけませんかと店長と相談しにいった。いきなり当初の2倍の値を提示してきた。唖然とする。
ネガティブな対応しかできない。「否定」からはいる悲しいタイプの人だった(たまにこのタイプに出会うことがある)。そして自分の成績ファーストでオーナーのことはその次だという思いが表情にでてしまっている。ネットオークション(不動産情報の「レインズ」同様登録業者しか閲覧できない)の話をしていたら「よくご存じですね、業界にいらっしゃいました?おくわしいようだから」といわれた。でもうれしくもなんともない。
ここに売ってもいいという思いがいっきにしぼむ。
「若い子たちを教育していくという発想がもともとない」というのがBモーターの業界でのもっぱらのうわさでなるほどと納得する。教育できる上司がそもそもいないということだろう。オペレーション面でいずれいきづまるのではないか。
自分のことをとやかくいわれてもしかたないが、20年以上メンテなんかでよくしてくれたHONDAのディーラーのことをけなし、貶めるようなバイヤーにはよい条件を提示されてもぜったいに売らない。
けんかっ早くなってきているけど、怒りはおさえて商談を続ける。
中古車の売買の世界は不動産業と同様、あしもとをみたり、さぐりをいれたり、金額を小出しにしてきたり、あとだしじゃんけんみたいな昭和が残っている。
クルマのディーラーも昭和の時代はやさぐれてすさんだタバコの煙まみれの中年のおやじが多かった。中古車販売業者はおしてしるべし。
それにくらべていまはこぎれいな身なりの若者や女性も多くなってさまがわりしている。
かつてのしつこい勧誘やキャンセルさせないなどのお客の迷惑顧みずのやりたい放題は減ってはいるだろうけど。
1日目はBモーターでのおおまかな相場観をさぐるための査定依頼、
2日目は6社による査定、戦意喪失し、リタイアしたのが2社。
さて、本日3日目は「総合的かつ俯瞰的に」業者を絞り(なんのこっちゃ)、最終決戦のバトルロイヤルを迎える。
競り合ったときの提示額が1000円刻みになったときその金額あたりが上限ということだろう。
「わたしたちはさぐりをいれたり、あとだしじゃんけんをしないつもりです。お見積もりについては文書にしてお渡ししております。よそさまの査定もどうぞ参考にしていただき、おきゃくさまの大切なおくるまをお売りください。」
そんな昭和のあやしげな商習慣をなんとかせんといかんと動いている業者はないものか。
と思っていたら、最後にかけこんできたオートバックスがそうだった。
もうほぼほぼ業者を決めていて、これ以上の条件をだしてもらうのは無理そうだし、きてもらっても無駄足になるだけだよ、と止めようとするけど、
ぜひ、なんとか参加させてください、と食い下がる。かけ値なしの「熱意」にはかなわない。
直感的にこのリーダーはこれまでと違う、と思った。
もとより初日の査定はボクシングでいえば「相手の出方をみる」1ラウンドとおなじで、
いっきに勝負に出るのはこれからのラウンドとなる。
この、よたった字が担当の飾りのないほのぼのとした人柄を表しているような気がした。