北九州在勤中に友人から招待状をもらい、博多マリンメッセで開催されるレナウンの優待割引バーゲンに通うようになった。
ダーバンのスーツやらシャツなどでほんと世話になった。
ところが、経営悪化から中国企業が買収したものの4年前に再建を断念した。
もう、あのバーゲンにいくこともない。
そう思っていたら、ダーバンと英国アクアスキュータムのバーゲンを10月に目白駅前の会場でやるというはがきがバーゲンを運営していた会社の名前で届いた。
昔の恋人からの手紙を受け取ったような気分だった。
狭苦しい会場だったために、殺到した来場者は30分間隔で100人づつ入室するという入場制限のなか、ほとんど期待せずにま、みてみっか程度でのぞいてみた。
基本、男性ブランド品なのに、50~60代のおくさまも見かける。
なんと、ご主人のための衣料品を殺気を帯びた目で選んでいるではないか。
その横でぼーっと突っ立っている目もうつろな、たそがれた男がいる。
自分が身につけるもんくらい自分で選ばんかい。気が知れない。
おくさんもおくさんだ、こんな男にしてしまった、あんたも悪い。
3割引きや4割引きでは動かない。
もう帰るつもりだった。
奥の試着室のそばに、いわゆるB級品のハンガーがあって、吸い込まれるようにつかつか近寄ると目の前のスーツが目にとまった。
B級品のぼくにサイズがぴったしの、33,000円。
ただし、
すぐさま傷のぐあいをチェックする。
たいしたことはなくまったく気にならない。
たいしたことはないけれど、「横浜そごう」ではもはや定価では売れないだろう。
「カワイ」さんも悔しかったろう。
その隣には間違った漢字でネーム入れされ、購入したはずのあるじを失って33,000円となってしまった悲しいスーツもあった。
そのまま、なりすまして着てしまうという手もあるがさすがにキャバクラや忘年会の時なんかに怪しまれる。
150,000と手書きしてあるがほんとか?
ただ、手触り、光沢のある材質、は申し分ない。
じつは衣料品の値付けは信じてない。
うそでも、だめもとでいい。
安サラリーマン生活しかしてこなかったから15万のスーツははじめてのこと。
これはイタリアの老舗の生地で仕立てられたものらしい。
イタリアでは人気の生地ブランドでロゴは織物の象徴である「クモ」の絵柄が使われている。
問題はこれを着るとチャラいイタリア野郎になってしまうのではないか、ということ。
ともあれ、いい買い物ができたかな。
B品のハンガーにはこのスーツ以外わたしのサイズのスーツは1着もなかった。
これも出会いかな、と思いながら。
10年前、最初にバーゲンセールの招待状をくれた魔美子さまにも感謝して。
これも、出会いかな、と。