ご存じ寺島しのぶの長男。10歳で初お目見得して以来フランスと日本のかけはしとなっている。
きりっとしたところは祖母富司純子の血を受け継いでいるようにみえる。
おじいちゃんは尾上菊五郎と名門の家系。
錦秋十月大歌舞伎で「音菊曽我彩」(おとにきくそがのいろどり)」で箱根の山を舞台に曽我兄弟の仇討ち物語の弟役を演ずる。鎌倉時代の実話がベースになっている。
いささかの気のゆるみもなく舞い踊る、りっぱな歌舞伎役者でさぞ女性のファンも多かろう。
ぼくの10歳のころとえらい違うな。
けど、幼いころからそのさきの道を運命づけられたことにいろんなおもいもあろう。
「俊寛」を演ずる尾上菊之助は寺島の弟。
経済誌の週刊ダイアモンドにも紹介されている。
今回の席は3階席の西。
テーブルはない。
幕間のお食事タイムで多くは席を外しているがいつも満席に近い。
いつか出世したら升席に。
江戸神田の裏長屋の騒々しいどたばた劇の「権三と助十」で中村獅童が駕籠かきの役を演ずる。
堂々として見事な演技だった。
江戸の貧乏長屋の人々の日常はどんなだったろうと思いを巡らしながらいつも下町を歩いている。
豆腐や納豆売り、魚や、銭湯、狭く粗末な裏長屋、煮炊き、井戸端のおかみさんたちのおしゃべり、飲んだくれて働かない職人たち、貧しくも小さなよろこびを見つけながら肩寄せ合って暮らす。
それがいま、舞台によみがえる。
夏の「井戸替え」で物語はスタートする。
「井戸」といってもすでに市中には玉川上水がめぐらされ、上水道を汲み上げるための井戸。
歌舞伎や落語に出てくる「井戸替え」は江戸の夏の風物詩 | スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト (suumo.jp)
中村獅童は長屋総出の「井戸替え」をずる休みする役だ。
「権三」が江戸の裏長屋の生活に連れて行ってくれた。
今回、幕間に軽食をとろうと銀座三越の地下で「助六」を用意した。
歌舞伎座の売店よりもいいのではと。
さすが、歌舞伎座のおひざ元、「助六」だけでも何店舗あってどれにしようか迷うほど。
そのためのこぶりのパックもある。
「観劇好適品」のシールはむろん、歌舞伎座でのお弁当にぴったりですよ、ということ。
「歌舞伎の幕間にはこれくらいがちょうどいいや」と店員さんに声をかけると、ビニール袋で渡そうとしていた手をとめ、「あら、でしたらこの紙袋にいれましょう」と用意してくれた。
そして、「歌舞伎、お楽しみください!」とありったけの笑顔で。
きっとマニュアルにはない対応だろうが、
「これが銀座三越か、三越の店員さんか」と感心する。