
午前8時45分に行列ができている。
デモだろうか。
さわぎを鎮めるために工場のおばちゃんがでてきて、工場の入り口に並びなおすよう指示される。

東京地検特捜部によるがさ入れだろうか。
強制捜査は「夜明けから日没まで」と定められている。

入り口前に「国産きなこ」と表示されたセメント袋が山積みされていて、なるほどきな粉に偽装されたヤクを押収するつもりか。コーヒーのにおいで麻薬犬をごまかす、とは聞いたことがある。
午前9時に工場の入り口が開けられる。
捜査員たちは次々に工場に入り、階段をかけあがる。
40人ほどが研修室のような部屋に案内される。
そして、検査が開始される。
まず、それぞれに小さなビニール袋1枚と、疑惑の信玄餅10個がわたされる。
「袋が破れないようにもちをつめこめるだけつめてください」と号令がかかる。
「ビニールが破れたら交換できます」
10個全部つめるのにかなり苦労する。
四苦八苦していると、となりのおねえちゃんはたくさんはいるようにビニールを引っ張ってのばしていた。
きたねぇ!と思った。ずるいと憤った。
先生、あの子ずるしてますよ!と手をあげそうになった。
すると、被疑者のおばちゃん先生は「ビニールはこうやってのばすといいですよ」とずるを実演して見せた。
ただ、掟があって、ビニールは一本結びをしないといけない。
わからない人がいるようで、「フーセン結び」と言い直していた。
ぼくは10個がやっとだった。
その道の達人は18個とか(もっと)つめるのだそうな。
あらかじめ置かれた10個を詰めて、まだいける人は追加をもらいにいく。
信玄餅の「ようじ」もやっかいで、これを刺したまま詰めると風船は爆発する。
そのために、先生はにこやかに「楊枝ははずしていいですよ」という。
すでに踏み込んだ40人は東京地検特捜部ではなくなっているが、係官は必死の形相で仕事に集中している。

賞味期限が近いものなどをお土産やさんから回収してこうやって処分している工場だった。
出口で「ふーせん結び」をチェックしてもらい問題なければ「220円です」と会計が許される。
ふつー、1個200円ぐらいじゃね?
それが一個22円?
処分するといいながら、廃棄にかかるコストをかけることなく、無垢な人たちを動員して必死の形相で袋詰めさせている。
いやはや、「詰め放題」への執念というか、人間のあさましさを見事に利用しているあざとい秘密工場だった。
ワインの仕入れと白州の天然水をくみに来た。
富士山の「足柄」で汲む水と白州とでは味が全く違う。
ミネラルの違いだろう。
4WD車スタッドレス生活をやめて3年。
積雪を避けるため天気予報を入念にチェックしてこれならいけると判断してから出発する。
今回は「蒼龍ワイン」だけではなく老舗の「原茂ワイン」ものぞいてみた。


そして、今回宿泊したのはいつものなんちゃって再生高級ホテルではなく、つくりに高級感がある石和の旅館。



しかし、石和といえば、ぶどう畑からとつぜん温泉が湧きだして、大騒ぎになった。
お色気路線で団体客には人気ではあったけれど、ご存じのように個人客へと客層がシフトして以来低迷している。
開湯当時の賑わいは、山梨らしいというか、いまでは考えられない光景だった。

右端には自慢げに歩くじじい、僕らと同じくらいの年代?

信玄公もやれやれか。
