
深夜3時、燃え盛る隣家の火事に恐怖の中生きた心地のしなかっただろう茶色の古い木造家屋の方としばらくその時のことを話した。
ビニールホースで水を撒こうとしたがすぐに無理だわとあきらめ避難する準備をしていた、とのことだった。
焼け跡の現場にいってみて驚いたのは、四方の隣家の壁に焦げたような跡がまるでなかったことだった。
ただ、数メートルの隣家のおやじさんが椅子に座って呆然とうなだれていた。無理もない。
家に直接的な被害はなくとも、心の痛手は一生残る。
消火活動の一部始終を眺めていた茶色の家のおじいさんは、興奮して話してくれた。
「消防車がきてさいしょにやったことは
屋根を壊した、
ことだった」と。
あがる炎を屋根から空に逃して、壁に火が回るのを最小限に防いだ。
まるで煙突のように、
川口のキューポラのように、
炎を閉じ込め、上空に向かわせる。
壊せる屋根だととっさに判断してのことだろう。
普段からの過酷な訓練のたまものだ。
羽田空港で起きた海上保安庁の小型機とJAL機との衝突炎上のさいのアテンダントたちのとった、賞賛すべき行動と重なった。
プロとして、住民や乗客を守るものとしての命がけの行動。
それを目の前で見た。
さいわい留守宅でけが人はなかった。
放火が疑われている。
