ひらがなは50音と決まっている。それはいたし方ない。
ただ、濁音が「か行・さ行・た行・は行」だけにしかないのがもう今日の生活にはそぐわなくなってきているのではないか、と問いたい。特に「あ」に「”」をつけたい。一部の漫画家はすでに時代を先取りし、「激しい驚き」を表すさいに使用している例がみられる。漫画の世界では表記できるが、ここでは「あ」に「”」としか記せないのがもどかしい。「あ」に「”」に「~」を加えることにより、表現が増すのは間違いない。単なる驚きだけではなく、何かを失ったときのもうとりもどすことのできない悲しみなどを表現できる。先日上野で開催された「運慶展」で仏像の奥深さに魅せられたものだが、「金剛力士立像の阿形・吽形」の「あ」、「うん」を見るにつけ思いを深くした。一言でいえば、「深みを増した」「あ」であり「う」とでもいおうか、これに「”」をそえることによりずしっとした重みや響きが加わる。が、楽しいときに使われることのない、悲しいひらがなの部類に入る。しかしながらすべてに「”」を加えればいいかというと必ずしもそうではない。「な行」「ま行」「や行」「ら行」は異論のあるところである。やはり、取り急ぎ追加すべきは、「あ」を筆頭に「い」「う」「え」「お」、「ね」、「の」、と続く。どちらかというと、実録やくざ映画「仁義なき戦い」などの広島弁に向いており、菅原文太がこうした発音の模範といえよう。奇しくも今月が日本映画界の巨星、高倉健と菅原文太がともに2014年11月に亡くなってから3年となる。英語でさえ「a」の発音がいくつもあるではないか。うっ、まてよ、英語の「a」に「あ」に「”」の発音はないっ!