由布岳 2018.7.28
ふと、「損をしていたこと」について思いをめぐらす。57才をすぎて九州に住むようになって、はじめて焼酎の味がわかるようになった。泡盛もおいしい。氷で割るときりっとする。日本酒は依然として飲めなくはないが悪酔いしそうで敬遠している。もし、九州で単身赴任しなかったら焼酎の奥深さをわからずに終わっていたのは間違いない。かつて「森伊蔵」の一升瓶が二子玉川の玉川高島屋の抽選で当たったことがある。地下のお酒売場で15年前、はがきで応募すると月に一度抽選があり、当選すると一升3000円の定価で購入できたが、聞きつけた業者が応募するようになると「応募はがき」はいつしかなくなった。そして6人ほどで酒盛りをしたことがある。そのとき、まるで焼酎に興味のなかったわしは誤ってほかの焼酎と混ぜてしまいぼこぼこにされた。わしはいい歳をしていながら住友スリーエムの「森伊蔵」だろうと「村尾」だろうと、「魔王」だろうが「大魔王」だろうがありがたみがわからなかった。森くん、あんときはごめん、先輩すんませんでした。
暮らしを変えてみなければわからないこともある。東京に家を持ち、満員電車だのなんだろうとエネルギッシュな東京で仕事して、週末に伊豆の海や信州の山々を楽しむ暮らしがいちばんだと長いこと思っていた。(ということは、いまは違うということ)週末暮らしならともかく地方に住まいを移す、など考えてもみなかった。人との、その土地、自然との出会い、新た発見、気づくことで生活がかわる。一度訪れただけで魔法の島沖縄宮古島にすっかり心を奪われ移住してしまう人も多い。大半の人たちは「焼酎」やほかの土地や自然の素晴らしさに気づかず過ごしていく。でも、それが「損をしている」かといえばそんなことはない。人生にとって「得をした」「損をした」はどれほど大切なことではないが凡夫のおやじは「ネクスコ西日本 九州高速道路走り放題 4日間定額8000円」に飛びつき、「元を取る」どころか九州を北九州~鹿児島大隅半島ぐるっと2周に相当する1600キロを走破した。末端価格では30000円になろうかという、食い意地がはる、ではなく走り意地がはったあさましさ。2018.7.30
2018.7 別府 志高湖