河津より伊豆大島の朝日
下田と稲取は金目鯛の水揚げが日本一の漁港。セリがはじまる早朝は市場は深紅に染まるだろう。2019.2.12 下田魚市場
伊豆には地元のスーパー「AOKI」があって店内を歩き回るだけで楽しくなる。伊豆の特産品などの品揃えの豊富さだけではなく工夫を凝らしたディスプレイで店内の雰囲気は都内の高級店に劣らない。
北九州地区で健闘する「ハロデイ」を思わせる。「〇オン」とか大資本のショッピングモールが地方の小売店を駆逐していくなかにあって奮闘している地元密着のお店は大切にしていきたい、と思う。なるべく地元の食材を仕入れたい。麺類でも納豆でも豆腐でもまずどこの製麺所かとかを確認してから購入する。だから、「〇ちゃん」のラーメンなんかは間違ってもかごに入れない。
そして、「AOKI」に寄る理由のひとつは「煮つけに」するため「地元であがった金目鯛」を仕入れることにある。
いつしか「高級魚」の仲間入りをされた「金目鯛さん」。いいのがたくさん並んでいるときがあって、そんな時は魚売り場がぴかぴか華やいで心がときめく。
どんな魚もそうだが個体差があって、気を付けないと細身の子たちがまじっている。特にきんめさんは個体差が大きく、お笑い芸人の「ハリセンボン」とかいうコンビの二人と同じくらい身の厚み、ふくよかさの違いがある。
だから、いくら下田に来たからといっても感情にまかせずいっぽうの「お吸い物にするしかない」タイプしか並んでない場合は迷わず見合わせる。今日は見事な身の付き具合で、大きなおめめも澄みきっており、判断に一点の迷いもない。
さばいてもらうようにお願いすると「切りますか?」と聞かれる。まるごと煮つけにするのが下田流。
ゴボウを新聞紙にくるみ、ハンマーをもってきて玄関にでる。そして、ゴボウを手加減しながら叩く。ゴボウが失神しないようやさしく半殺しにする、やくざと同様、人をあやめたりぼこぼこにしてはいけない。たったひと手間かけるだけで煮込んだときゴボウにきんめの極上の煮汁が染み、きんめにゴボウのふわっとした香りがつく。双方ウインウインの関係になる。これは人間の世界も同じだねとうなづく。
羅臼の昆布の布団を敷いて火にかける、そしてきんめさんに横になっていただく。大事に大切に料理しますけんね、とおくさんにもかけたことのない声をかけ、祈りをささげる。それが料理人だ。
そして、かぶとは大根と生姜で吸い物に。本日のきんめはくさみがなく、生姜は少しでいい。
自分だけおいしいものをいただいてきたつみほろぼし。どうぞ召し上がれ。
「伊豆太郎」の地魚にぎり。伊豆天城特産のわさびが250円で追加できる。サメの皮ですりおろすとたちまちわさびのあわあわがもりあがり、それだけでつまみになる。