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夜明け前の「Joyfull」別府店

車中泊おやじの朝は早い。とてつもなく早い。

その日の朝は別府で迎えた。夜明け前の4時、いつものように24時間営業の「ジョイフル」で朝食をとる。今日は佐賀関のフェリーで四国に渡るのだ。7時の始発便に乗船するためここでうだうだ過ごす。


「ジョイフル」は激安ファミレス、という。激安でなくてもいいのだが24時間営業で深夜はともかく早朝の時間帯に別府でうだうだできるのはここくらいなもので「行き場がない」からごひいきにしている。

通常平日の朝4時すぎにここでくつろいでいるのは深夜勤務明けのおつかれさま、早朝出勤おはようさま、早起きじいさまたちが主な客筋。この時間帯のファミレスは地域の働く人々の一日の始まりと終わりがすれ違う深夜早朝の奇妙な人間交差点となっている。


この朝は様子が違いなにかしら訳ありの2組のお客がいた。(正確にいうとおやじを含め3組)

推定年齢35歳。メタボぷよぷよ体型の男子一名。ここにいる理由は不明。他に母子2人連れ、子供は小学3年生くらいのかしこそうな男ん子。会話をするわけでもなく男の子は黙ってゲームで遊んでいる。4月19日金曜日、もちろん春休みでもない。


そこに、ぷよぷよのおばあちゃんと思われる人が血相を変えて入店してきた。80すぎだろうか。そして、まっすぐぷよぷよのとこに向かい、注文することもなく立ったままぷよぷよに「はやく帰ろうっちゃ」、「はよせんね」と大きな声で家に帰るよう何度もせきたてる。


ぷよぷよは応じるふうもなくむにゃむにゃにやにやしながら席を立とうとしないものだから、おばあはますます強い調子で「帰ろうっちゃ」を100回くらい連呼し「孫」を家に連れ戻そうとする。


35才は家にいたくないのだろう、おかあさんはどうしたんだろう、ある家族のつらそうな事情に思いが及ぶ。30分以上おばあは必死になって、時には手をあげ、ひっぱり、大分の女性らしく男勝りで力ずくで立たせようとする。この子をまっとうな人間にしなければ死んでも死にきれないという気迫があった。その光景におやじも下を向く。たまらず泣けてくる。


「伝票かせっちゃ!」おばあは伝票を取り上げようとする。孫は「いま、電報っていったやろ」とおばあをからかい、笑い、伝票を渡そうとしない、、、


世の中にはしあわせなおばあさんがいて孫がいてやさしい家族に囲まれて過ごしている一方でこのさき長くはない人生にやるせない思いを引きずりながら暮らすおばあもいる。


孫は孫で頑張ってはいるのだが就職やら人間関係やらうまくいかないで悶々としているのではないか。体格もよく建設業ででもやっていけるようなりっぱな体だけに家にいたらあれこれうるさく言われるだけなんだろう。きっと本人もつらい中にいるのかもしれない。それを思うと身につまされる。

夜明け前の別府湾の激安ファミレスの店内で繰り広げられる必死に連れ戻そうとするおばあさんと帰りたくない困った孫のシルエット。この国はほんとに幸せな国なんだろうか。


 


すると、いちばん奥のほうのテーブルでひっそりしていた子連れのでっぷりむっちりとしたおばちゃんが我慢の限界とばかりに振り向いて「うるさい!」と凄みのある声で叫んだのだ。小学生は黙ったままゲームをしている。2人は終始無言であったからはじめて聞いた声だった。


おやじは太りすぎのおばさんたちのことをあーだこーださげすんだが、このお母さんも「太りすぎ」になる理由もきっとあったのだろう。小学生は学校にちゃんといっているのだろうか。母子がファミレスを転々としているのだろうか。ゲゲゲの鬼太郎ならともかく児童相談所ものだと感じてしまう。ただこの「うるさい」おかあさんはこの老婆とプチ家出してきた孫のただならぬやりとりをどう感じているのだろうか、不憫に思ったりしないのだろうかとも思った。


ほどなく、しぶしぶ孫はへらへらしながら立ち上がりレジに向かった

人生において「へらへらしなければならないとき」というのはあまりいいときではない。自分の悪いところをうすら笑いでごまかしているときだから。哀愁のある屈辱感をその身にまとっている。

もちろん会計はばあちゃんがすませた。店員のおねえさんはこの家族とどうやら知り合いのようでことさらなだめることも注意することもせず成り行き任せだった。タクシーがやってきて店をでていった。


こんな深夜早朝のつらい光景は別府だけではないだろう。大分の人たちはいったいに声が大きく言葉はきつい。こわいものはなにもないおばちゃんクラスになると叫びながらお話ししているように聞こえるときがあるが面倒見のいい心根の優しい人たちばかりだ。もっと乾いてかさかさの東京や日本全国各地で泣きたくなる光景が毎日毎晩形を変えくりひろげられているのだと思う。


みなさんはファミレスのランチでの友達や家族とのおしゃべりは楽しくうれしいものかもしれないが、そうでもないつらい家族もいるのです。

平成が終わろうとする深夜早朝の、プチ家出のおにいとおばば、そしてここにいるはずのない、いてはいけない小学生と不気味な母親、ファミリーレストランでのある二組の「行き場のない」家族の姿がやるせなくなった。

2019.4.18

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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