はたぼー時空を超える

富嶽三十六景 深川万年橋下 北斎

各地をうろうろするのもいいがたまには「時空を超えて」みたい。部屋に居ながらにして空想豊かに往時をしのび、あるいは未来にワープしてみたい。

ボランティアガイドで東京の歴史も伝えることになりそうだし、お勉強しておかないとね。わたしはいなかもんだから、江戸っ子にはなれないし、きっぷもよくない。「あさししんぶん」とか「しろしまのしろせさん」と訛ることもない。だからといっていじけてはならない。


もし、いま令和の時代から江戸時代の江戸の街中にぽっとんと落ちてみたらどうだろう、と思った。やはり、神田神保町あたりかなぁ。蕎麦やうなぎもおいしそうだし、商人や鍛冶屋、大工(でーく)たちがうろうろ、そして浅草吉原の花魁も見られるしと思い立った。さっそくいってみることにした。

ところが、手違いがあって、神田のムラサキスポーツあたりにぽっとんと落ちるはずが、深川の万年橋に落っこちてしまった。

しかたがない、GPSもないしゼンリンの地図も整っていない時代だから。時は1831年、天保2年。北斎が72歳のときのこと。


なんと富士山がくっきり、筑波山も見えるではないか。橋を渡る人たちはちょんまげでみんな和服を着ている!

ま、そんなことより、おやじがもし江戸時代に暮していたらどうだろう、という思いがふつふつと湧いてきたのにはわけがあった。なんのために時空を越えなければならなかったか。

絵本隅田川両岸一覧 北斎

仮住まいに引っ越しを済ませ、ようやく日常をとり戻しつつあるこのごろ、仮住まいのトイレに入っているときに戦後の混乱期のような引っ越しを済ませた安心感とともにしみじみとしてそれを思った。

建物は古いがきれいにリフォームされ清潔そのもの。新品のTOTOウォシュレットが備えられている。もう、何がいいたいかお気づきのことと拝察するが江戸時代はどうだったんだろうということだ。


花魁もいい、隅田川の花火もいい、一膳めしやや湯屋もいってみたい。だが、しかし、一点気にかかることがある。

これから先はお食事中の方はご遠慮願いたい。

いま、こうしてきれい空間となったトイレ。北九州発の世界的メーカーとなった「TOTO」、昔は東洋陶器といった、がこのTOTOがウォシュレットを世に出す前のずっとずっとずっと前のトイレ事情はどうであったか。

紙も高価であったし、新聞をくしゃくしゃするということもなかった、例のものは世界一循環型資源再生可能リサイクル都市であった江戸が放っておくわけがない。あのあと、落ちていったものはどうなったか、そして用が済んだ自分はどういう行動というか、所作を行ったのか、ネットや文献でつぶさに調べてみた。

けつ論からいうと、ここではふれないほうがいい、ということになり、いえることはそこでおぞましい行為が行われていたという事実である。まして、長屋は共同便所でいろんな男女が入れ代わり立ち代わり用を足すのであるからしてその光景は想像さえしたくない。

大江戸くらし図鑑」によると「落ちていったもの」は大名家や大店のもののほうが庶民が暮らす裏長屋のものより高価で買い取られた、との記述がある。


そのへんの事情からいうと、明治、大正はおろか、平成前の昭和の時代にもきやすくワープするもんじゃない、という気もする。ご存知の方も多いと思うがわしらの昭和30年代40年代の小中学校の「便所」」もダークサイドゾーンだった。「できうるかぎり個室には入らなかった」。まだ、色濃くTOTOウォシュレット前の時代を引きずっているからである


東京オリンピックではじめて日本にやってきた外国人たちが日本のトイレのきれいさ、清潔さに驚くことは間違いない。日本人の「清潔さ」へのこだわりも。

新名神高速道路の新宝塚サービスエリアのトイレには「撮影禁止」との注意書きが貼ってあるほどだ。私としてはどんどん撮影して中国に広めてもらいたい。

中国を旅した人は経験済みであろうが町の一部の中心部を除いて中国の便所はおそろしいことになっている。詳しくは書かない。上海では生ごみも道路にぶちまけてあって、どぶみたいになったごみを清掃局の人がスコップですくってトラックで持っていっていた。10年以上前のことだからその後かわったのかもしれない。

意を決して有名な「仕切りのないトイレ」に潜入したことがあるがぼくはもう、金輪際「旅人」といわれなくてもいいと思った。朝昼晩5日間にわたる連日の毎食中国料理攻撃がボディーに効いてくる中国はぼくが行ってみたい外国の169番目にエントリーされている。

ロンドンでさえ街中で無料トイレをさがすのが大変で、ビール大好き人間のぼくはあちこちで大いに困ったのだった。飲食店でトイレを貸してほしいというと、「なんか注文しなさい」とおねえさんに命令調でいわれた。東京のあちこちにあるコンビニを見るたびに思い出す。

行くなら電池式の携帯ウォシュレットを持参すればいいのだけれど、税関になんて説明するのかな。


 

 

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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