子ゴルゴは修行中のため頼りにならず、爺ゴルゴみずからが国際機関からの新たなミッションを受け、ロンドンに飛んだ。
ここで、美人国際スパイの「ももいろくのいちZ」を抹殺するのだ。
滞在予定のホテルの1室に潜み、銃に弾を込め彼女の到着をベランダで待つことにする。
ベランダの眼下にはプールがあり、もし抹殺に失敗したときは8Fのこのベランダからプールに飛び降りることになろう。
彼女がヒースロー空港に到着するまでにしばらく時間がある。なにもベランダに張り付いていなくてもいいと、
スコッチでも飲みくつろぐことにする。
つまみはセブンイレブン浜松増楽店でnanacoで買った「バターピーナッツ」といとこの和子ちゃんからもらった浜松の「割れせんべい」だった。
つまみ選びを間違ったことにすぐに気が付くことになる。
せんべいのやかましく割れる音はスナイパーとして失格である。和子ちゃんになにげなく仕組まれたかもしれないと疑った。和子ちゃんはある組織にかかわっていると聞いていたからだ。
ほどよい酔いにまどろんでいると「温泉にでも浸かってくるか」という思いが浮かんだ。
これから美人スパイを始末するにあたり、彼女を前にして心身ともに身ぎれいにしておかなければいけないのではないか、もしそのももいろが案外いい人だということがわかり意気投合し、デューク東郷がデューク意気投合になってしまい、かならずしも望んでなかったわけではない想定外の展開になってしまった時に備え、すみずみまで洗っておかなければいけないのではないかという思いが酔いも加わって頭を支配していた。
そうと決まれば急ごう。ぼやぼやしている場合ではない。
この姿で温泉にいくのは気が引けるが仕方がない。
銃はおもちゃだといってフロントに預ける。間違って女湯のれんをくぐるところだった。ミッションを前にして疲れているのだ。緊張もしていたのだ。
せっかくだしサウナにも入っておこう。もうもうとする熱気の中でしたたる汗とももいろZへの思い。
そうだ脱水症状になってもいけない。サウナに入って水分補給が水では情けない。
幸い自動販売機にエビスビールがあったので、50ペンスで購入し一気にぐびぐび飲み干す。
準備万端相整い、814号室に向かった。
爺ゴルゴは酔いつぶれることはない。ただ、年に数回霧島酒造の芋焼酎「黒霧島」のロックの飲みすぎでもうろうとなってしまうことがあるが今日は特別な日だ。
そして、部屋の前に立ちドアを開けようとポケットの鍵をとりだす。
しかし、鍵はなく「とじ込み」をしてしまったことに気づく。
「銃」も預けたままだった!
うかつだった。
部屋ではなにやら物音がする。
誰かいるのだ。
ともかく中に入らねばミッションは達成できない。迷っている場合でない。
そんな責任感が部屋のチャイムのボタンを押させた。
「ピンポア~ン」
ほどなく、ガシャガシャとドアを開ける音が、、、