ぼくがしばらく来ないうちに「富士吉田駅」が「富士山駅」に名前がかわっていた。どうして安直に、しかも富士山を代表するかのような名前に変えるのだろう。外国人が大挙してやってくるようになったのがきっかけだろうが、甲府や富士宮、駿河湾周辺、西伊豆の声なき人たちのことを一度でも考えたことがあるのだろうか。富士急はなにさまのつもりなんだろうか。
中国による「力による現状変更への試み」に対抗するために周辺諸国は結束して抗議しなくてはならないのと同様、G7において富士山問題も議題にあげてもらう必要がある。
焼酎の「霧島酒造」は霧島の麓にあるとはいえじつは鹿児島ではなく宮崎の都城にある酒蔵である。
昔だったら同じ薩摩だったろうが、鹿児島の人たちは「霧島」はおらが自慢の山と思っているから、ぼくはどっちでもいいやんと軽く流すがおいどんたちは宮崎がその名を名乗ることを軽く流せないでいる。
宝永の大噴火で怒り狂って以来以後300年以上おとなしくしている富士山だけどこれだけ不信心ものが正道を外れ土足で登ってきたらここらでいっちょうやったろかと思うはずだ。
標高900メートルの道の駅。朝晩は19度と気持ちがいいい。下界は猛暑、甲府盆地の勝沼は40度まで気温があがり笛吹川の桃農家のおじさんは「もう桃づくりは無理」と音をあげている。
富士山の伏流水を汲みにきた。
「バナジウムの含有量が多い」ということだけど、なにがどういいのかわからんらしい。海藻や貝にも多く含まれているから、いっしょにとると摂りすぎになるから注意せよとも。
「バナジウム水は、摂取することによって血糖値の抑制や、脂質の代謝を促進してコレステロールの合成の防止、便秘の改善といった効果が期待されています。しかし、あくまで動物実験などの結果から効果が期待されています。」と紹介されている。
「期待されている」という。しかも「あくまで」という。「期待されている」を2回も繰り返しているところをみると責任を回避し相当弱気になって効能から逃げていることがわかる。
このあやふや感。なにやらテレビ通販のお肌に良い、とか痩せる器具のうたい文句のようであやしげだ。
ともかく、一口飲んでみる。
超軟水「白州の天然水」ひとすじのわたしにはビールでいえば「アサヒのスーパードライ」のようなインパクトがあった。
のど越しががつんときた。
「白州の天然水」をやさしいおかあさんとするならば「富士吉田の天然水」は「男梅のうめぼし野郎」のような男気を感じた。
そういえば、プロレスラーの闘魂三銃士の一人武藤 敬司もここの出身だったな。
この道の駅にはこの天然水でつくる「ビールの醸造所」がある。
「バナジウム入り」でおいしさが「期待されている」。
成分は
「カルシウム0.3~1.6㎎、マグネシウム0.1~0.6㎎、バナジウム6.2μg、硬度 約30mg/L(軟水)」
軟水でお茶にも向いている。
おいしそうだけど、、、
富士吉田のソウルフードは「吉田のうどん」でまちのあちらこちらにうどんやがある。
ずいぶん前、富士吉田出身の後輩に勧められた名店、「さくらい」でゆでキャベツと油揚げを刻んだのがのっているうどんをいただいたことがある。
うどんは博多の「牧のうどん」の対極にあるごわごわ麺である。北極と南極というよか月と地球ほどの差がある。
割り箸を三日三晩煮込んだらこれくらいになるのだろうかというくらい固いうどんで、「牧のうどん」はぼやぼやしていると刻一刻とお雑煮の餅がとけたようになっていくのに対して、「吉田のうどん」は型崩れゼロのぼやぼやしてもいい男うどんである。
試したことはないが「丸亀製麺」のうどんを「ばりかた」にしてもらったらこれくらいになるのではないか。
その後カヤックのメンバーで西湖にいったとき、名物だからとふたたびお店に入った。
すると、ひとくち口にするなりみな押し黙って、会話もなくなりお通夜のようになってしまった。
つねづね自分は「かわっているのではないか」と思っていた。そこでいい機会だからと3人の「吉田うどん」への反応を試そうと連れてきた。まず、箸を持つよりそのゆがむ顔をしかと確かめるのがさきだった。思うつぼだった。
これで自分が「そんなにかわっているわけではない」ことが証明された。
したがって、今回は名物の「吉田のうどん」も「富士山ビール」もいただくこともなく「水汲み場のバナジウム天然水」を汲めるだけ汲んで、いわば「ただ酒」ならぬ「ただ水」をがぶがぶ飲んで、おみやげにまでしてもらって帰ってきただけの旅となってしまった。
2021/8/3