淡島千景「鰯雲」2022/1/16

神保町シアター

ミニシアターのさきがけであった神田神保町の岩波ホールが54年の歴史を経て今年7月で閉館する。表向きはコロナが原因であるかのように説明されてはいるけれどそうではなかろう。きっかけとなったということだと思う。

学生時代に岩波ホールではじめて見たのがアンジェイ・ワイダの「大理石の男」で、その後「ブリキの太鼓」など世に媚びるハリウッドの商業主義の娯楽作品とは一線を画す佳作を上映していた。

上映作品が社会的で前衛的であったため、いっぱしの文化人気取りで通ったものだ。


近所に開館した「神保町シアター」は岩波ホールほどエッジが効いているわけではないが、映画監督や俳優にフォーカスした特別上映をしている。そこには彼ら彼女らへの深いリスペクトとともに日本映画の全盛期の作品を紹介していこうとする決意みたいなものを感じる。

「よしもと漫才劇場」も併設しており新人の登竜門となっている。

15作のシリーズ上映作品のなかで私が選んだのはこの作品

淡島千景には江戸っ子らしい凛々しさときっぷのよさがある。

戦後の厚木を舞台に農地解放後のかわりゆく農村の家制度を背景に葛藤する家族の姿を描いたものだ。


本家の長男を演じた中村雁治郎のファンである。

「大阪物語」、「女系家族」での演技は秀逸で日本映画の至宝とさえ思っている。


名匠成瀬己喜男さんを目の前にしてはとても言えないが、戦争未亡人の淡島千景と新聞記者の木村功が恋仲になる筋書きは突拍子もなく不自然であったし、日本橋のお店の娘で宝塚出身の淡島がよろよろと耕運機でたんぼを耕す姿は見ていて滑稽ですらあったが、戦後の混乱を経た新しい時代に翻弄される本家と分家のせめぎあいは当時の社会風俗をよく描いているとおもえる。

淡島がよたりながらたんぼを耕しているむこうに小田急のロマンスカーが高速でかけぬけるシーンは戦後の終わりを告げるようで印象的だった。ロマンスカーに戦後の復興を、新しい時代の到来を田んぼを切り裂くようにして告げさせる演出である。


手塚治虫は淡島の大ファンであり、リボンの騎士のサファイア王女のモデルは淡島であった。

手塚の描く女性はどこか中性的で色気がないといわれていて、手塚もそれを気にしていた。

淡島千景の性格そのままをサファイア王女に投影したのだろう。


ホールのお客さんの大半が年配の先輩たち(とおもわれる)でわたしはそのなかでいえば「青年部」に属する(とおもわれる)。

母は千景さんの3つ年上だけどなんとなく風貌と性格が似ているように思える。若尾文子同様、男どもと対等に、それ以上にはりあえる芯の強さを感じる。

女優が銀幕のスターであって、いまのような安っぽいタレントでなかった時代の映画である。


TV番組の衰退はコマーシャルにもあらわれてきていると感じている。あたらしいCMソングがでてきておらず、口ずさみやすい聞き覚えのある童謡唱歌のたぐいの焼き直しばかりである。

作詞家作曲家が次々と鬼籍に入るのと足並みをそろえるかのように音楽界もしぼんできている。口ずさみたい音楽もこのかたでていない。紅白歌合戦ももはやかまぼこだけでいい。


サケも獲れず、いくらも高騰、かにもさんまも大不漁、海は枯れ、海藻が生えずウニもいなくなっている。旭川に毎年スキーに行っている先輩は札幌のすすきのの居酒屋でカニやウニのあまりの高騰ぶりにあきれて食べずに帰ってきた。


髪は薄くなり、声はしゃがれ、階段の上り下りも通勤生活をやめたあたりからつらくなり、いましがたも「女系家族」のタイトルを思い出すまで3分かかり、こないだはとうとう「上戸彩」の名前がわからなくなって、「ほれ、あの半沢直樹の、おくさんの、光が丘の学童クラブにいた、」とかどうでもいいことばかり覚えていてしどろもどろになり、40代の女性に聞いてもすぐにはでてこないしまつ。


「南野陽子」と「石野真子」の区別がつかんようになったら引退したほうがいいと路線バスの旅の徳光さんと石野真子をみながら思った。

ともあれこのごろ自然界にかぎらずわたしの構造上の問題も含めなにもかも異常だ。


あちこちにあるミニシアターがおいでおいでしているが、オミクロンウイルスが感染拡大しているおりでもありなかなかいけません。
2022/1/16

お茶の水駅の神田川。

重機もなかった江戸時代に多くの人工たちが手作業で浅草橋まで掘り進んだ苦労を思う。

汗まみれになって長屋に帰っておかみさんや幼子と粗末な食事をして、水浴びしてすきま風の吹く狭い部屋で寝床について、、、

歴史を知れば知るほどその土地土地がいとおしくなるし見る目がかわる。

知ろうとしなければただの水路としか目に映らないし感慨も何もない。勉強とはそんなものであろう。

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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