2時間58分の大作である。
2回に分けてみることになった。
不思議な映画で主役は西島秀俊であるはずなのにときに脇役にスイッチする。
それくらい脇役の三浦透子と岡田将生に存在感をもたせたつくりになっている。
そしてそれに応える演技だった。
2回に分けてみることになったのは途中でもう見なくてもいいやと思ったからだ。
妻役の霧島れいかと西島のでだしのせりふが不快だった。見るのをやめようかと思った。
原作は短編だ。
読んではないが村上春樹はこんなセリフを用意したとは思えない。
ところが寡黙で無表情な運転手役の三浦と暴力性を秘めた舞台俳優役の岡田がしだいにそれぞれのその封じ込めていた内面をあらわしはじめると同時に、車のギアがあがり物語は加速し一気に駆け抜けていく。
西島は色気のない学校の先生のようだった。だから性的な発言もどこか不自然でぎこちない。そんな役柄を求められていたのだろう。
教科書を読むようにぎすぎすしながら進む物語にゆたかなあたたかみを添えていたのはパク・ユリムとジン・デヨンの夫婦役の二人だった。
広島を舞台にした画像は計算されていてどこを切り取ってもいいくらい映像美としての完成度が高い。
世界で評価されたのにはその後のいまの「HIROSHIMA」の姿をみることができたことも関係しているのだろうか。
ラストのパク・ユリムが西島を抱擁し母親のようになぐさめるシーンはチェーホフの舞台のエンディングであると同時に自らが妻を死に追いやったと信ずる西島を包み込む西島本人のためのシーンであった。
2022/3/3