アキバ帰りに日暮里で途中下車。
午後1時半。
ラーメンならわかるが立ち食いそばでのこの光景はありえない。
フェイスブック(X)で教えてもらったとはいえ並んでまで食べるもんじゃないと、街歩きをすることにした。
このあたりには駄菓子の問屋さんが集まっていていかにも荒川区らしく、下町らしさいっぱいだった。
イベントがあるときにはまとめ買いにきたりなつかしく思い出される。
しかしそこに駅前再開発の大津波がやってきて、問屋街もきれいさっぱり流されてしまった。
もう、駄菓子屋さんは消えゆく運命なのだろうか。
なんちゃらタワーなんかができて、このあたりにあったお店も入居している。
中国料理の「大三元」も人気で、ここにはいってしまおうかと思った。
ただ、「一由そば」めざしてきたんやなかったのか?お前。
思えば立ち食いソバなんてさっとでてきてさっとたべてしまって回転はめちゃはやい超ファストフードの王様だ。
ならぶか。
しばらくこないうちにこのあたりにはスカイライナーでやってくる外国人をあてこんだ、いかにも民家を建て替えたような狭小のプチホテルがそこかしこにあって、スーツケースごろごろのインバウンド客がうろうろしている。
しぶしぶ並ぶ。
コインパーキング、1時間900円。停められるだけありがたく思えってか。
なんとなく税関のパスポート検査くらいのスピードで前に進む。
向かいには昭和感あふれる場末のスナックやパブが健在だ。
ならんでいるときに注文をきめときな、と。
メニューをみるまでもなくもうすでに「ゲソ天」と「春菊天」と決めていて決心がゆらぐことはない。
普通のそばが290円、これをベースにゲソ天160円、春菊天130円を乗せてしめて580円。
ほどなく順番がやってくる。
スーツケース連れでやってくる客もいる。じゃまだなぁ。
入り口に有田みかんの箱がおいてあってどうぞみかんをおもちかえりください、とのこと。
注文する人は、「半ゲソ天」に「半春菊」、「半しょうが天」だのやたら「半」を連呼している。
いろんな味を一堂に乗せて味わうよくばりちまちま作戦のようだった。
いちいちそんなめんどくさい注文に応じる下町のおばあちゃんが輝いてみえる。
スーツケースはどうやら成田から日暮里で降りてここに直行したようだった。
わかる。わかるわぁ。
この身長差30センチの二人連れもリピーターの「半」族だった。
ここのイカゲソ天はゲソぶつぎりぷちぷちどっさりの正真正銘のものだった。
春菊もだらしなくどんよりしているのではなく、油まみれでない、エッジの効いたものだった。
出汁もやさしく味わい深い。
感想を一言でいえば「40人の行列ができていても食べて帰りたい」だった。
「スーツケース連れであろうと迷惑になろうと食べて帰りたい」だった。
近くにはアキバにもあるいきつけの「六文そば」もあって、そこで浮気しようかとも考えたが、思い直してよかったぞ。
ここはまごうことない名店で最高評価5.0を与えたい。
20年前に知っておれば人生が変わったかもしれないくらいの衝撃だった。
なにを大げさなといわれるかもしれないが、人生はこうしたきっかけやひょんなことや小さな出会いが積み重なって混ざりあって豊かなものになっていくんだぞ。