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ピアノの搬入 2020/3/19

東京に雪が降った3月14日、薄手の作業着で寒さに震える業者は自宅にやってきながらピアノの搬入を断念した。縦にしないとドアを通過できないためで、そのために玄関で縦置きにする作業スペースが必要となるが雪で滑りやすく作業員にとって危険であるし、業者の説明ではせっかくきれいにクリーニングをすませたピアノにとってもよくない、との判断からだった。なにしろ250キロを2人で担いで運ぶのだから。


一転してポカポカ陽気の19日に仕切り直しとなった。

このピアノの搬入が引っ越しの最大のやま場で、幅70センチのドアを通過することができるか固唾をのんで見守った。切り返しを何度も繰り返し、「ぎりぎりだった。」というわたしよりずっと年上の大将がいった。

ふつうの体格の白髪の大将は「ほんとならとっくに引退してなくちゃいけないんだが、、、」と笑っていた。見た目じゃない。世の中には白鵬もおれば、舞の海や炎鵬もいるのだ。その言葉に「引退なんかそうやすやすとするもんじゃない」と思った。


40年前に製造されたヤマハのアップライトU3Hは当時のベストセラーで「この時期に製造されたものはいい材質が使われており、まだまだ何十年も弾ける」という。

クリーニングで新品のようになっている。お肌がぼろぼろだったこのピアノはお化粧したら別人のようになった(まれにそんな女性がいる)。ファンデは基本中の基本なのだろう。

クリーニング費用は77000円、ほかに調律16500円、フレンジコード(スプリング)修理に27500円。

おっかあと息子と娘が練習したこのピアノがあらたによみがえって、家の歴史を引き継いであと40年、孫たちにつないでくれるのだろうか。

これでようやく引っ越し完了宣言。



南向きの私の部屋は都立高校に隣接しており、毎朝、漆黒の暗闇からしだいに明るみはじめ、刻々と空の色が変化し朝日が差し込んでくる営みが体験できる。

その微妙な色合いの変化が好きだ。さいしょはほんのり微かな光でしだいに刻一刻色をかえながら力強い太陽の光へと変化していく。まるでセミの羽化のようにゆっくりとした営みで、新しい一日のはじまりを告げる。


高校にはみごとな「けやき」の巨木があって、灰白色の薄汚く無機質な高校の校舎の景色に唯一色合いとやすらぎを添えている。

毎朝、自分の一日がそうであるように一日としておなじ色合いの朝はなく、今日という日がいい一日でありますようにと願うのだった。富士山や駿河湾の景色ならどんなにすばらしいだろうってことも思いながら。

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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