海と山の地方暮らしもいいかなと思う反面、やっぱ東京じゃないとね、と思い直すことも再三。
名作シネマの上映館の多さはそのひとつ。
コロナで遠慮していたが、そうもいってられなくなって、チケットを買い、手をアルコール消毒したあとスタッフに検温器を頭に当てられ、ようやく入場できるシアター。
東京の名画専門のシアターは池袋「新文芸座」、阿佐ヶ谷「ラピュタ」、吉祥寺「UPLINK」、「神保町シアター」、飯田橋「ギンレイホール」、渋谷「シネマベーラ」、銀座「国立映画アーカイブ」、まだまだある。
昭和の日本映画の質の高さ、充実ぶりを物語るものだ。
なにより監督が個性的でこだわりがすごかった。昭和の時代そのものが煮えたぎっていた。
縁のなかった成人映画でさえ芸術的であるといえる作品もあっていまではいとおしく思える。
台湾、韓国映画も評価が高い。
戦前戦中戦後の汗をかきひたむきに生きてきた時代、大人も子供も殺気立って大まじめだった時代の日本人が好きだ。
映画会社の制作路線も時代に翻弄され迷走していくがそれがまたつかみきれない混沌とした時代を切り取っていていい。
団塊の世代の持て余したはちゃめちゃのエネルギーや、わけあって追い詰められ犯罪に手を染める若者や、薄給でありながらも職務に忠実に励む機関車の運転手や警察官、学校の教師、貧しさの底辺でうごめく人たち、労働争議、売られていく娘たち、麻薬と拳銃、暴力、猥雑な飲み屋街、清純な娘のほのかな恋心(いまでは絶滅品種)、裸電球の下のつつましい家族のだんらん、、
今の役者では浅野忠信を評価している。柄本明や香川照之など怪優と呼ばれる役者の層は厚いが彼は希少な正統派の役者。
失敗作「ミッドウェイ」では空母飛龍の名将山口多門艦長を好演していたのが唯一の救いであった。そしてこの「日本独立」でマッカーサーたちと互角にわたりあった白洲次郎を演じることができるのは浅野くらいだろう。明晰でストレート。ぶれず筋を通す男がはまり役かな。
英語が上手いと思ったがクオーターでおじいさんが北欧系のアメリカ人だったからか。
仲里依紗とのバカップルぶりが報道されてはいるがそんな雑音はどうでもいいだろう。名優の身辺は騒がしいものだから。