練馬はだいこんの名産地だったけれど、いまではキャベツ栽培が主流となっている。
理由はいくつかあって練馬大根はやたら長く引き抜くのが重労働で農家が敬遠したためといわれている。(ながいうえに首と根っこが細く、真ん中が太いために土に引っかかって抜くのに往生しまっせ)
江戸野菜の研究者であり「江戸東京野菜の物語」などの著者である大竹道茂さんによると、
東京に人口が集中し始めたころから農家のありかたに変化が起きた。
ひとつには地方から流入した大量の人たちの住まいづくりのために東京近郊の宅地の供給が急務となり、「宅地なみ課税」を行い農家が税負担から農地を手放さざるを得なくした社会政策的な側面。まさに江戸時代から野菜の一大供給地であった練馬はターゲットだったのだろう。
その政策的な動きは過去のものではなく、生産緑地法の2022年の営農義務期間の期限切れを間近に控え、さらなる宅地化が進む(不動産業者が狙っている)といわれている。
「生産緑地」として農地が税制面で優遇(農地並み)されるかわりに30年間の営農義務が課されていた。それが解除され農地は農業をやめるばあい自治体に買い取ってもらうことができる。
そして、もうひとつが「F1種」野菜のこと。
流通市場に乗せるための品種改良で、「一回限りの野菜の種」つまり育てても種が取れない野菜の種の登場。
江戸から続く野菜の固定種は不揃いで段ボールに詰めて出荷できるのは全体の3割ほどしかなかった、そのため同じサイズの同じ品質の野菜をつくる必要があった。
そのために品種改良の末生まれたのが「F1種」野菜ということで、わしらは知らないうちに育てやすく不揃いのないレーシングカーのような野菜を食べていたわけだ。
旬にかかわらず年中大根が食べられるのもそのためだ。
大竹さんは江戸東京野菜「固定種」復活に向け活動している。
その比較についてこのサイトが紹介している。
長さや太さにばらつきがなく、無駄なく出荷できる工業製品のような野菜。
ハイブリッドといえば聞こえはいいがやはり不安は残る。
江戸を訪れた外国人には「江戸の野菜は大根をのぞき見るべきものはない」と映っていたようである。