平戸とウイリアム・アダムス 1620年

徳川家康の信頼を得て旗本として取り立てられたウイリアム・アダムス、三浦按針。

平戸のイギリス商館がアンボイナ事件により1623年に閉鎖される3年前にイギリス人ウイリアム・アダムスはこの地で死去している。

下町ロケット「山崎」。安田顕はウイリアム・アダムスの子孫ではないかといわれているが定かではない。

ウイリアム・アダムスがオランダ人の仲間たちに遠洋航海の腕を買われてオランダのロッテルダム港を出港したのは1598年6月のこと。

マゼラン海峡を経てハワイを経由して極東に向かう途中5隻だった艦隊はリーフデ号1隻になってしまうほど当時の航海は過酷なものであった。出航から半年かかってマゼラン海峡を通過しペルーに到達したときにはホープ号とリーフデ号の2隻になっていた。そのホープ号もハワイで沈没する。
(ネットで得た画像に一部赤文字を追加させていただきました)

リーフデ号が日本に到着したのが1600年4月のこと。2年近くの見渡す限り大海原の気の遠くなる大航海である。

食料、水、病気、時化、暴風、炎暑。新鮮なミルク、野菜も望むべくもなく、船には冷蔵庫も、エアコンも映画館もない、若い男たちだらけ110人。女性もいない。(とくにこのへんが気が遠くなるがいたらいたで女性をめぐり乱闘騒ぎが起こるのは必定)


到着というより大分県臼杵市の黒島に漂着したときリーフデ号の110人だった乗組員は病気(赤痢・壊血病)などで24人になっていた。

臼杵藩から長崎奉行所に通報されたちまち乗組員は投獄され、積まれていた大砲や弾薬を没収される。そしてアダムスたちは大阪に護送、船は回航されることになった。

青い目の異人たちの命からがらの上陸に臼杵は町中が仰天したことだろうが、この絵ではぜんぜんびびっていないようすで、「どこからきんしゃったと?水ば飲まんね?」と余裕。

そこで当時豊臣政権下の五大老首座だった徳川家康がアダムスと接見することになる。1600年の4月の引見は「尋問」に近いもので数回にわたった。

航海の目的や航路、またカトリックのスペイン、ポルトガルとプロテスタントのイギリス、オランダの紛争などについて隠さず答えるアダムスに家康は好感をもち信頼した。

東西15万の兵が激突した関ヶ原の戦いの幕がが切って落とされたのはその尋問のわずか5カ月後の1600年の9月15日である。

このとき、アダムスは徳川方について戦いに加わっている。もともと海戦にも参加したことのある海軍の軍人である。


このとき東西の陣営から味方になるよう催促されていた小早川秀明は態度が煮え切らないまま天下分け目の合戦をむかえていた。

関ヶ原の戦いの3年後21才で病死する。数奇な境遇と運命に翻弄されたなかの謎の病死。映画では大谷吉継の呪いで狂死したと描かれていたりさんざん。

秀吉の養子だったこと、毛利輝元のいとこを妻にしたことなどから表向きは西軍に属した秀明にとって家康は秀明の敗者復活を口添えし筑前筑後52万石の領地を得るきっかけとなった恩人であったことが世に名高い「東軍への寝返り」へと向かわせたのではないかといわれる。


19歳だった秀明は戦いがはじまっても「寝返り」をせず両軍の戦いの様子をうかがっていた。その優柔不断な態度に業を煮やした家康は攻撃を催促するために秀明の陣地に「銃を撃ち込んだ」(世にいう「問鉄砲」)。「なにやっとるだ、はよ攻め込まんか、このこわっぱめが!」の怒り心頭。

驚いた秀明はすぐさま西軍の大谷吉継めがけて攻撃をしかけ、この友軍からの奇襲攻撃が西軍の敗北につながったといわれている。


歴史家泉秀樹さんによれば、混戦乱戦のなかにあって10丁ほどの「小銃」を陣地に撃ち込んだところでどれほど効果があったか疑わしく、アダムスがリーフデ号に積んでいた「大砲」を撃ち込んだのではないかと推測している。

煮え切らない奴には警察ものの映画では「机をたたく」かやくざ映画では「大事な恋人を人質にとる」あるいは「大砲を撃ち込む」しかない。


この命がけで大分に漂着したアダムスの大砲が、青い目のサムライが当時の世界史でも類を見ない大いくさの行く末をかえるきっかけになったのではないか。


伊豆伊東に日本で初めての造船所をつくるなどして家康に厚遇された旗本三浦按針も家康亡き後、鎖国に向かっていくことになる幕府に警戒され不遇のまま、1613年に設置された平戸のイギリス商館に職を得る。

1614年に故郷へ帰る許可も下りたが東インド会社の船団の司令官を嫌い、平戸にとどまった。そして、平戸で死去。死後3年してあの凄惨な事件は起こり、商館は閉鎖される。またひとつ平戸を語る材料が増えた。

その後イギリスが日本史の表舞台に登場するのには幕末まで待たなければならない。

2021/8/26

作成者: user

還暦を迎えてますます円熟味を増す、気ままわがまま、ききわけのないおやじ

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