県をまたぐ外出はやめてくれ指示が解除されようやく伊豆へやってくることができた。
道の駅に併設されている温泉施設は早朝5時オープンで涙ものだ。4時に目覚め、海岸を散歩してクルーザーを品定めして見て歩く。どれも個性的な艇でオーナーの性格や趣向が見て取れる。
これは「釣り専用」、これは「見栄のみ見せびらかせ」タイプ、「愛人にささげる」系、純粋にクルージングを楽しむための「加山雄三」タイプ。「税金払うくらいならクルーザー買って節税しよう」系。
開店とともに湯に浸かり朝日をながめる至福の時間。食堂も朝6時からで身離れのいいあじの特大干物定食が710円でいただける。お風呂は早朝割引で600円。
地元の漁師さんらしきお年寄りのご常連さんたちが温泉のドアが開くのを待ちながら駐車場の車に目をやり不安げに話している。
「東京やらの車が多くなった。まだ収まってないだにぃ。」
洗い場はひとつおきの使用で地元はまだピリピリしていて、おみやげやさんも商売あがったりの様子。
伊豆半島はまるごと観光地で旅館、ホテル、民宿、おみやげやさんなどはまるまる3カ月以上収入を絶たれている。
こんなことははじめてだ。
うちの近所の「貫井浴場」の銭湯の入浴料金はいつのまにかじりじり値上がりを続け470円もする。それでも午後3時には開店を待ちきれず扉の前にはご近所のじじばばが大集結している。じじばばが大集結しても浴場側にとってこの470円は経営上ぎりぎりの価格設定かもしれない。じじばばはそんなに急がなくてももうすぐ「極楽」にいける。
銭湯大好き男だった。あの湯気と開放感、そしてよたったじじいがどざえもんのように、木場の丸太のようにぷかぷか浮いている湯ぶねが好きだった。びりびりしびれる電気風呂、ラドンだかモスラだか知らんがガラスで隔離された放射線の湯もある。南光スイミングスクールに通っていた息子をつれて二人して真っ赤になって江戸っ子よろしくやせ我慢大会のように浸かっていたものだ。
でも、この470円はもったいない、もういいやと思うようになった。
スポーツクラブ「ルネサンス」でいつでも会員になっていつでもサウナ付きの大浴場に入れるようになったことが銭湯を私から遠ざけてしまった。でも、温泉は銭湯とは違う。しみじみ疲れがとれる。疲れてなくても癒される。極楽感が違う。