小倉の実家を売却し、月末に引き渡す準備を済ませ東京へと向かう。
前回同様、北九州から都市高速経由ではなく、国道2号線経由で山口南インターでいけばアップダウンのきつい中国自動車道を走ることなく防府の手前まで行ける。
そして、ここ長距離トラックオアシス「みちしお」でゆったりくつろいで車中泊後目覚めたら、信号機がほとんどない国道をインターまで40キロほど走る。
長距離トラックの運転手さんはどんな人たちだろうか。
ひとくくりにはできるはずもないのだが、少なくともデスクワークや営業はやりたくない、ましていやなうるさい上司にぺこぺこ頭を下げて卑屈になって働きたくない、という人たちではなかろうか。
配送の指示は受けるけれど、荷物を積んで届けるまでは相棒のトラックとご意見無用の一人旅。
休憩をしっかりとることを義務付けられたり、好き勝手に飛ばして爆走できなくなったりと昔と比べ窮屈になっているようだけどそれもドライバーの安全のため。
走行中はほぼ時速90キロ程度で、追い越しの時でさえのっそりじわじわ追い越していくためわしら飛ばし屋はいらいらしっぱなし。
会社に所属し、きまりを守るのは仕方ないにせよ上司からいちいち命令されるのはいやだろうな。
人に使われたくないひとは人を使いたくない人でもある。
自分がそうだからよくわかる。
車を転がすことが好きで、好きなところで食事して日本中の景色を楽しむことができるのはトラック野郎にしかできないことだ。
今晩の食事はどこのドライブインにいくか、そんなことばかり思いながらひた走る長距離運ちゃんに親近感を覚える。
長時間労働、渋滞、トイレ、駐車スペースの確保、積み下ろしの順番待ち、一年のうち三分の一が車中泊、、、、あげればきりがないくらいご苦労の連続に加え低賃金。そんな業界。
サンダル履きで、制服組以外はきままなラフな服装でいい。
ドライバーのなかには「その筋」とわかるおっちゃんもいる。もんもん隠しの中袖のウエアを着ている。「あんさん、その道のかたですか?」と確かめたわけではないが、ぼくのような温和でやさしいまなざしではなく眼光するどくすきがない。
大正から昭和初期の任侠道の時代、お上は組の解散をせまり、まず「運送業」と「土木建設業」への転業を勧めた経緯がある。
ここ、「みちしお」は堂々と酒を提供している。
ここはうれしいビール大瓶650円で、焼酎、日本酒、ほぼ居酒屋、焼酎はこの450円でアイスペール山盛りの氷つきだ。
ドライバーにうれしい居酒屋食堂?
ぼくの全盛期をほうふつとさせる。
飲みすぎて人恋しくなったのかさかんに中国人の若い店員に話しかけている。
広い寝台でじゅうぶん寝てからハンドルを握るはず、と思いたい。
それよか、ドライバーでないことを祈る。
チェーン店のような「このあとお車の運転をされませんか?」とポーズだけのやぼな質問などしない(‘◇’)ゞ
聞かれて「運転します」という答えるばかがどこにいる。
おかずの価格は高め。
宿泊できる駐車場代、いろいろな併設施設の維持管理費も含まれているようでオアシスの利用料として納得する。
いわしの煮つけを注文いたら、つくだ煮のようなどす黒く煮詰まったのがレンジでちんして超高温で運ばれてきた。鮮魚王国北九州からきた人はまず魚関係は避けたほうがよかろう。あさり汁のあさりはひからびてやせている。前回学習したから注文せず。
くせのないやさしいスープのちゃんぽん800円でしめる。
トイレの奥にはお風呂があった。
力が強くないとはいれないようだ。
シャワーじゃ味気ないし、湯船のある個室の銭湯という雰囲気。
本格温泉♨がいいなら千円するけどとなりにいけばいい。
50円の値上げがどんなに苦渋の決断だったかが伝わる。
高騰後だいぶ経つのにどんな思いでこのオアシスを運営しているかがわかる。
前日、大切な人と小倉の有名店のカウンターでお店お任せの本格的なコースのお寿司をいただいた。いかが好きだと話していたら、大将に聞こえていたのか、「いかがお好きらしいですね」とヤリイカの切り身ににうにを乗せて先付けにだしてくれた。
東京では無理かもしれないが、北九州なら。
実家の処分で思い残すことはない。
のどぐろはもう食べることができなくなる日がくるかもしれない。