安宿暮らしが体に染みついていて、せっかくのGO TO TRAVELの大盤振る舞いに際しても旅館や高級ホテルは敬遠気味。
この地域クーポン券は宿泊割引35%に加えさらに宿泊料の15%が付与されるわけだけれど1000円以下は足切りとなる。
したがって、宿泊料が6800円以上でないと1000円のクーポン券がもらえない。するとそれ以下の宿泊料を設定しているビジネスホテルはどうしたか。
朝食バイキングつきの部屋に夕食をつけた6800円の2食付きプランをはじめたのだ。
まず、6800円の料金設定から入って、夕食にはいくら当てられるか逆算して献立を組み料理を用意したことになる。
地元民はあのホテルには夕食付プランはなかったはずだけどと訝しがった。
それもそのはずゴーツーのための特別プランで要するに観光業界もそれほど必死なのだ。
このクーポン券はなかなかかしこいやつで、駅のスーパーマーケットでも使え、なんでも買えるものだから、普段はかごに入れるのを躊躇する缶ビールのいいやつなんかをちゃっかり仕入れてしまった。
駅の売店のおみやげなどまるで興味がないからお土産やでしか使えなかったら無駄にするところだった。これこそありがたいクーポンだ。
お土産のお菓子類は四国のなんちゃらという会社が日本全国から注文を受けてまとめて製造して、全国にばらまいているみたいだからありがたくもなんともなくばからしくなってしまった。
おやじはおやじなりの「貧の意地」というこだわりがあって、特に旅についてその意固地は頂点に達する。
理想の宿はコンドミニアム型のキッチン付きの部屋で当然食事はついていない。
それゆえ地元のスーパーで当地の食材を仕入れ調理するスタイルで、長年の八ヶ岳の山荘や東急リゾートの会員旅暮らしがベースにある。
金沢では近江町市場でずわいがにの脚がもげてはぐれものになったやつばかりのお得なパックを買い求め、部屋に持ち帰りDAISOで買った鋏でばりばりやって無言でむさぼる、というのが至福の時間だった。
夢よふたたびと鳥取ゲゲゲの鬼太郎境港魚市場でそれをやったら、脱皮がらみのふにゃちんすかすかガニでまいってしまったこともあった。しかも甲羅や殻が大量のごみとなってしまい清掃のおばちゃんはさぞびっくりしただろう。人生が台無しになったような気がした。
失敗と苦労の連続の人生だった。
和服きた女将のあいさつなんていらん。見たくもない。
きれいどころが玄関で勢ぞろいしてあいさつする。ぞっとする。
品数あふれる豪華な食事も必要ない。いつも大半を残してしまうから。
イノシシだ、アユだ、タラの芽だ、これもいらん。
こんなん出せば客は珍しがってありがたくいただくとでも旅館は思っているのだろうか?
いわしの刺身やあじのたたきや、さんまや、さばの塩焼きの方がずっといい。
しかも焼きたてで湯気があがっているやつ、切り口が立った刺身、ももの塩焼き。そうなると地元の居酒屋「二十五万石」にいくしかないべ?ビジネスホテルと歓楽街の居酒屋のゴールデンタッグが生まれるのは自然の法則。
だから、夕食付きの宿には縁がない。縁をもとうとしない。
お祭りの時でさえ着ない浴衣着て、ホテルでスリッパ履いてぺたぺた歩くのもしたくない。パジャマも持参しているから浴衣はいつも使わずじまい。
Wi-Fiは必須。PCと映画の詰まったHDDとブルーツーススピーカーもセットで持っていく。
さらには備え付けのお茶っ葉はくず茶でおいしくないからお気に入りのお茶の葉ももっていく。
東名高速のサービスエリアの売店に並んでいるお茶の葉はいろいろ試したが、玉石混交というかろくでもないのが多く、失敗を繰り返した結果、沼津の問屋さんの「茶通亭」に落ちついた。
高級茶と言いながら2杯目くらいで葬式の香典返しのお茶になってしまうのもあるなかで、しっとり何杯でも美味しくいただける味わい深いお茶だ。新東名沼津SAで絶賛発売中!
夕食までの時間を畳の上で横になってごろごろするのもいやでしょうがない。なんでか、と問われても答えようがないがだらしなくみっともない気がする。
ごろごろだらしなくしたいから温泉行くんだという言い分はわからんでないが。
だから、現職の時の職場の典型的な宴会団体旅行は気がめいったが世の常世の定めと割り切って楽しんだ。
旅の楽しみのひとつはご当地のブックオフ巡りで、その土地土地の個性があって実に楽しい。
掘り出し物を見つけた時のヨロコビ。並んでいるのはすなわちご家庭などからの出物でご当地の文化レベルを反映しているといえる。
今日は江戸古地図でいいのを見つけた。1000円したが状態がとてもよく即断した。
あれこれ旅館がなぜいやかあまたあげつらねてきたところではあるけれど、ここ別府の「杉の井ホテル」は特別で別格で、特にカニバイキング祭りをめざして乱入したときにはカウンターパンチでうちのめされた。
殻がふにゃふにゃしている軟弱な奴はおらず、りっぱなはさみをもった正統派のずわい工業高校とたらばたいまん女子高からきたかにばかりが並んでいた。
そして、たいてい和洋室が用意されていてホテルと旅館のいいこどりの水陸両用ホテルで温泉といい申し分がない。
ただ、二人以上のご利用となっているため、いくときは家族かお友達をひっぱってくるしかない。
いまの別府駅前は閑散としている。あれだけ目立った外国人観光客が掃除機で吸い取ったようにきれいさっぱり消えている。太平洋アジア立命館大学の学生の姿も見かけない。
観光バスは皆無。こんな別府は見たことがない。
伊豆以上に観光依存度が高いであろう別府は深刻な状況にある。
2020/10/14